丸三証券株式会社は、明治期から続く老舗証券会社でありながら、現代の金融ニーズに応じた対面営業×オンライントレードの融合モデルを武器に成長を続けている。大手三社(野村・大和・SMBC日興)とは異なる独自ポジションを確立しており、証券業界の「セレクトショップ」とも呼ばれる存在だ。
組織のノルマを廃止し、顧客ニーズと立地特性に合わせた目標設定を行うことで、担当者が顧客の利益を最優先に提案できる体制を整えている。「人を育てる」文化を100年以上守り続けており、業界未経験から金融のプロを育てるための研修・教育体制が充実している。
企業概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社名 | 丸三証券株式会社 |
| 英文社名 | Marusan Securities Co., Ltd. |
| 設立 | 明治42年12月(1909年12月)※丸三商店として創業 |
| 代表取締役社長 | 菊地 稔 |
| 本社所在地 | 東京都千代田区麹町3-3-6 麹町フロントビル |
| 資本金 | 約100億円 |
| 従業員数 | 1,098名(2025年3月時点) |
| 上場区分 | プライム市場(証券コード8613) |
| 売上高 | 約186億円程度(2024年度参考値) |
| 平均年収 | 約700〜780万円程度 |
| 平均年齢 | 36.1歳程度 |
| 平均勤続年数 | 12.8年程度 |
| 事業内容 | 有価証券の売買・取次ぎ・引受・募集・売出し、投資信託・金融商品取引業 |
創業から100年以上、親会社を持たない独立系を貫くことで、特定の金融グループの商品を偏って売る必要がない中立的なポジションを維持している。全国28店舗に加え、インターネット取引サービスも展開し、幅広い顧客層にリーチしている。長期勤続者が多く(平均勤続年数12.8年程度)、組織として安定性の高い会社だ。
主な事業内容
丸三証券の事業は「金融商品取引業」を主軸に、顧客の資産形成を支援する各種サービスで構成されている。
株式・債券売買仲介
国内株式・外国株式・国債・社債・外国債券の売買を仲介するコア事業だ。担当者が顧客の投資目的やリスク許容度をヒアリングし、ポートフォリオを提案するコンサルティング営業が基本スタイルとなる。大手証券に比べて顧客1人に対して時間をかけた丁寧な対応が特徴で、長期的な関係構築を重視している。
投資信託・資産形成支援
投資信託の販売・管理は近年とくに注力している分野だ。NISA(少額投資非課税制度)の拡充・恒久化を背景に、長期積立投資ニーズを持つ新規顧客の獲得が活況を呈している。投資信託のラインナップを「セレクト」することで質の高い商品を厳選し、顧客の利益を優先した提案ができる点を売りにしている。
IPO・引受業務
新規公開株(IPO)の引受・販売も手がけており、IPO銘柄の取り扱いが投資家の集客につながる重要な商品ラインナップを形成している。中堅証券としての強みを活かし、中小型IPO銘柄を中心に引受業務を展開している。
インターネット取引サービス
対面営業を補完するオンライントレードサービスを提供しており、手数料の透明性・使いやすさを訴求している。「対面の温かみ×ネットの利便性」を組み合わせた「ぬくもりのあるオンライントレード」というコンセプトで、顧客が必要に応じて担当者にも相談できるハイブリッド型のサービスモデルを展開している。
法人・富裕層向けサービス
法人の資金運用相談や、富裕層向けの資産管理(ウェルスマネジメント)サービスも展開している。株式・債券・投信に加えて、相続対策・事業承継支援なども含めたソリューション提案が行われており、単純な売買仲介を超えた総合コンサルティング機能を強化している。
丸三証券の強み
強み1. 創業100年超・独立系の信頼ブランド
1909年創業という長い歴史と独立系経営の安定性は、顧客からの信頼の源泉だ。特定の親会社の商品を推薦する義務がないため、真に顧客利益を優先した中立的な提案ができる点が、富裕層・高齢の長期顧客に評価されている。「老舗×独立」というブランドは、同規模の競合他社との大きな差別化要素になっている。
転職者にとっては、大手証券グループの部品として動くのではなく、独立した企業の一員として働ける点が魅力で、個人の貢献が組織に直結しやすい環境がある。
強み2. 「にんげん証券」のコンセプトによる顧客本位営業
本部からのノルマを廃止し、部店ごとに地域の顧客特性に合わせた目標設定を行う体制は、証券業界でも珍しい取り組みだ。担当者が「売れる商品」ではなく「顧客に合う商品」を提案できる環境により、顧客満足度と長期的な信頼関係の構築に成功している。
「人を売る」という表現が社内でも使われており、担当者の人柄と関係性こそが商品という発想が根付いている。顧客本位の金融サービスを志す転職者にとって、理念と実務が一致した職場として映りやすい。
強み3. 証券業界内でトップクラスの働きやすさ
年間休日120日以上・19時以降の残業原則禁止・完全週休2日(土日祝休)という条件は、証券業界の中では際立っている。証券会社は「残業が多い」「ノルマが厳しい」というイメージが強いが、丸三証券はその逆を行く働き方改革を実践している。長期勤続者(平均勤続年数12.8年程度)が多い事実が、職場環境の良さを裏付けている。
強み4. 人材育成の充実した研修体制
「人を育てる」文化を100年以上継続しており、金融未経験の新卒・中途入社者でも、研修を通じて証券業務の基礎から応用まで系統的に学べる体制が整っている。証券外務員資格の取得支援はもちろん、ファイナンシャルプランナー(FP)・CFP・相続アドバイザーなどの資格取得も奨励されており、自己成長を求める人材に向いている。
強み5. 全国ネットワークと安定した顧客基盤
全国28店舗のネットワークと長年の顧客との取引関係は、景気変動があっても一定の収益基盤を維持する力の源泉だ。歴史ある法人顧客・富裕層個人顧客との深い関係性は、大手証券が大量の営業人員で獲得しようとしても簡単に奪えないモートとなっている。
丸三証券の年収事情
丸三証券の平均年収は、複数の情報源を総合すると700〜780万円程度が実態に近い水準とみられる。日本経済新聞の公開データでは平均年収約782万円という数字も報告されており、証券・金融業界の中堅企業として相応の水準を維持している。
職種別の想定年収レンジ
| 職種 | 想定年収レンジ |
|---|---|
| 総合職(入社3〜5年目) | 450〜600万円 |
| 総合職(主任クラス) | 600〜750万円 |
| 課長クラス | 750〜950万円 |
| 証券個人営業(歩合込み) | 500〜900万円 |
| 証券法人営業 | 600〜1,000万円 |
| アナリスト・リサーチ | 650〜950万円 |
| 経営企画・管理本部系 | 600〜900万円 |
| 採用担当・人事 | 500〜750万円 |
給与制度の特徴
昇給は年1回・賞与は年2回(夏・冬)が基本だ。総合職は入社から数年で主任という役職に就く制度があり、役職昇格が給与アップに直結する体系になっている。大手証券と比較すると初期給与は抑えめだが、残業が少ない環境と年間休日120日以上という条件を加味した実質的な労働条件は高く評価される。
年収を見る際の注意点
- クチコミベースの年収(500〜600万円台の報告多数)と有報ベースの平均年収(782万円)に乖離がある。これは高年収の管理職が平均を引き上げている可能性があるため、入社数年目の実態年収はやや低く見積もる方が無難だ
- 営業職は顧客獲得・資産残高の維持に応じたインセンティブがある場合もある
- 地方店舗勤務では転勤に伴う住宅補助等が付く場合があり、額面年収以上の実質的な処遇になることがある
丸三証券の働き方・福利厚生
証券会社の中でも働きやすさを重点施策として掲げており、残業規制・休日取得・育児支援の各施策が整備されている。
勤務時間・休日
- 完全週休2日制(土曜・日曜・祝日休み)
- 年間休日120日以上
- 19時以降の残業原則禁止
- 有給休暇(入社後半年で10日〜、継続取得を推奨)
リモートワーク
- 基本は出社型だが、職種・業務内容によってはテレワーク対応可
- 対面営業が主力のため、営業職は原則として店舗・外回り中心
主な福利厚生
- 各種社会保険完備(健康・厚生年金・雇用・労災)
- 退職金制度・確定拠出年金制度
- 社員持株制度(奨励金あり)
- 財形貯蓄制度
- 独身寮・社宅制度(転勤者向け)
- 慶弔見舞金制度
- 育児休業・育児短時間勤務制度
- 介護休業制度
- 健康診断・人間ドック費用補助
- 証券外務員・FP等の資格取得支援
- 各種クラブ・サークル活動への補助
注意点 顧客対応窓口がある支店勤務の場合、市場が動く午前中から昼にかけて忙しい時間帯がある。また転勤が発生する総合職は、数年ごとの異動で全国の支店に赴任する可能性があり、ライフプランとの調整が必要だ。
丸三証券の社風・カルチャー
一言で表すなら「温かみのある老舗プロフェッショナル集団」
100年以上続く企業らしく、礼節・誠実さ・人への敬意を重んじる風土が根付いている。「人を育てる」という価値観が経営理念レベルで継承されており、若手でも先輩が丁寧に育ててくれる環境だ。証券業界にありがちな「個人主義・競争」より、チームとして顧客をサポートするカルチャーの方が強い。
一方で、プライム上場の独立系中堅企業として変化への対応スピードは速くはない。新しいことを提案する際には根拠と説明責任が求められ、腰を据えて信頼関係を積み上げるタイプの人に馴染みやすい。
評価される人物像
- 顧客の立場に立って考え、長期的な信頼関係を大切にできる人
- 誠実に・粘り強く顧客の資産形成をサポートしたいという志を持つ人
- 業界の知識を積み上げながら成長を続けるプロとしての自覚を持つ人
- チームで動き、周囲と協力しながら成果を出せる人
表面的なイメージと実態の差
「独立系=小さい会社で地味」というイメージとは異なり、1,000名以上の組織と100年の歴史・全国28店舗のインフラを持つ、安定した規模の企業だ。また「証券会社=ノルマ・残業が激しい」というイメージも、丸三証券には当てはまらない。一方で、「ノルマがないから楽」というわけでもなく、顧客の資産残高を維持・拡大するための粘り強い営業努力は求められる。
丸三証券の転職難易度
難易度:B級〜A級
証券業界の中では比較的間口が広い採用スタイルで、業界未経験でも積極的に受け入れている。ただし、適性・コミュニケーション能力・志望動機の一貫性は厳しく見られるため、「なんとなく受けた」では合格しない。
理由1. 業界未経験者歓迎だが適性判断は厳しい
総合職・資産形成コンサルタント職では「証券業界未経験歓迎」「未経験OK」の求人が多く、転職でのハードルは比較的低い。ただし、顧客の大切な資産を扱う仕事のため、誠実さ・責任感・数字への強さなどの適性は書類・面接の両段階でしっかりと評価される。
理由2. 「にんげん証券」との価値観の一致が問われる
「人を通じた長期的な資産コンサルティング」というビジョンに共感しているかどうかが選考の重要な評価軸だ。「手早く稼ぎたい」「オンライン金融の方が好き」という人は選考でミスマッチと判断されやすい。
理由3. 長期安定志向か否かが合否を分ける
平均勤続年数12.8年というデータが示すように、長く働いてもらうことを前提に採用している。「ステップアップのための短期転職先として考えている」というスタンスは採用側にも透けて見えるため、中長期でのキャリア設計との整合性を示すことが大切だ。
丸三証券の主な募集職種
対面営業を担う総合職・専門スタッフが採用の中心だ。
- 証券個人営業(個人顧客への株式・投信・債券等の提案営業)
- 証券法人営業(法人・富裕層向けの資産運用コンサルティング)
- 資産形成コンサルタント職(対面×オンラインを融合した個人顧客向け営業)
- 採用担当(人材採用・採用戦略立案)
- 経営企画(全社戦略・経営管理)
- IR担当(投資家対応・開示書類作成)
- 法務・コンプライアンス(金融商品取引法・内部管理)
- 情報システム担当(社内IT・取引システム管理)
- 投資信託・商品企画担当(ラインナップ選定・商品開発支援)
丸三証券に向いている人
1. 顧客と長期的な信頼関係を築くことに喜びを感じる人
「売って終わり」ではなく、顧客の人生設計に伴走することに意義を見出せる人は、丸三証券の価値観と深くフィットする。初回商談から数年後の資産変動相談まで一貫して担当できる環境を活かし、真のリレーションシップバンカーを目指したい人に向いている。
2. 証券・金融業界でプロとして長く働きたい人
未経験から入社してFP・外務員等の資格を取得しながら専門性を積み上げ、長期的に金融のプロとしてキャリアを歩みたい人に向いている。平均勤続年数の長さが示すように、腰を据えて成長できる環境が整っている。
3. 働き方のバランスを保ちながら金融業界で活躍したい人
育児・家族との時間・趣味との両立を重視しながらも、専門性の高い金融職に就きたい人にとって、19時以降残業禁止・年休120日超という条件は業界内で得難い水準だ。
4. 独立系の組織でやりがいを感じたい人
大手証券グループの一員として数字に追われるより、独立系として顧客本位の提案を積み重ね、会社の成長に貢献したいという志向を持つ人に向いている。
丸三証券に向いていない人
批判ではなくミスマッチ防止のため、以下のタイプには慎重に検討を勧める。
- タイプ:高額インセンティブを最優先する人 — 歩合給が中心の大手証券と比べると、基本給体系が主体のため、短期的な高報酬を最優先にする場合はミスマッチが生じやすい
- タイプ:テクノロジー・フィンテック志向が強い人 — 対面コンサルティングが主軸のため、最先端の金融テックに関わりたい人にとっては物足りなさを感じる可能性がある
- タイプ:転勤を強く拒む人 — 総合職は全国転勤が原則であり、勤務地の固定を求める場合は入社前に希望を確認する必要がある
- タイプ:スタートアップ的なスピード感を求める人 — 老舗企業特有の意思決定プロセスがあり、変化のスピードを求める人には合わないことがある
- タイプ:数年でステップアップ転職を前提にしている人 — 長期勤続を前提にした育成体制のため、採用側の期待と齟齬が生じやすい
丸三証券の選考対策
選考1. 「なぜ証券業界か」「なぜ丸三証券か」を明確にする
大手証券ではなく丸三証券を選ぶ理由として「独立系・顧客本位・人材育成文化」を具体的に語れることが重要だ。「にんげん証券」のコンセプトへの共感をどう言語化するかが差別化ポイントになる。
選考2. コミュニケーション能力・誠実さを面接で体現する
丸三証券の選考では人柄・誠実さへの評価が重視される。話す内容だけでなく、聞く姿勢・言葉遣い・礼節などの基本的なビジネスマナーも評価対象だ。顧客との長期関係を想定して、信頼を与えられる人物かどうかを面接官は見ている。
選考3. 金融知識の基礎を事前に整える
未経験可とは言え、株式・債券・投資信託・NISA・iDeCoなどの基礎知識は最低限把握した上で選考に臨むことが求められる。金融用語への慣れと基礎的な経済感覚を示すことで、学ぶ意欲と素地があることを伝えられる。
選考4. 長期的なキャリアビジョンを明確に提示する
「丸三証券で10年後にどうなっていたいか」を具体的に語れることが求められる。富裕層担当になりたい・FPとして相続案件を専門にしたいなど、成長のイメージが描けているかどうかが評価される。
選考5. 転勤・フルコミットへの覚悟を示す
総合職は全国転勤があり、複数支店でのキャリアを経ることを前提とした採用だ。転勤への柔軟性と、対面営業職としてのフルコミットへの意欲を明確に示すことが重要だ。
選考6. 採用情報サイトや説明会を活用してカルチャーを体感する
採用サイト(marusan-saiyo.com)では「にんげん証券」のコンセプトや社員インタビューが掲載されている。説明会や座談会があれば積極的に参加し、現場社員の言葉からカルチャーを理解した上で選考に臨むことが効果的だ。
丸三証券への転職で評価されやすい経験
- 対面営業・リレーションシップセールスの実績(業界不問)
- 保険・銀行・信用金庫など金融隣接業界での顧客担当経験
- FP(ファイナンシャルプランナー)・証券外務員等の金融資格保有者
- 富裕層・高齢者への丁寧なコンサルティング経験
- 不動産仲介・相続対策など資産形成に関わるアドバイザリー経験
- 顧客の信頼を長期的に積み上げてきた対面接客業での実績
- BtoCの長期関係型営業(医療、教育、保険など)での担当経験
- 数値管理・顧客資産残高の維持・拡大を意識した業務経験
- 証券会社・投信会社・運用会社でのリサーチ・商品企画経験
- 情報システム・社内SE経験(バックオフィス系)
- 採用・人事経験(中途・新卒採用担当)
- コンプライアンス・内部管理・金融法務の経験
特に評価されやすいのは「保険・銀行などの金融隣接業界で対面営業を経験し、顧客との長期関係を構築してきた人材」と「FP資格×顧客相談実績を持つ資産形成アドバイザー」だ。
まとめ
丸三証券は、1909年創業という長い歴史と独立系の安定経営を背景に、「にんげん証券」として顧客本位のコンサルティング営業を貫く中堅証券会社だ。証券業界の中でも年間休日120日以上・19時以降残業禁止という高い水準の働きやすさを実現しており、長期勤続者が多い点(平均勤続年数12.8年)もその裏付けとなっている。
平均年収は700〜780万円程度と業界平均を安定的に上回り、「金融のプロとして腰を据えてキャリアを積みたい」という志向の転職者に向いている。業界未経験からでも挑戦できる入口の広さと、研修体制の充実が若手・キャリアチェンジ組から評価されている。
一方で、転勤前提・対面営業中心・意思決定のゆっくりした老舗カルチャーという点は、人によってはデメリットになりうる。応募前に「長期的に人の資産形成に伴走したい」という動機との一致を自問した上で、選考に臨むことを勧めたい。
