はじめに
「営業企画に興味があるけど、実際何をしているのかよくわからない」
転職相談の場で、この言葉を何度聞いたかわかりません。営業は誰もがイメージしやすい職種ですが、「営業企画」となると途端に輪郭がぼやけます。
人材エージェントとして20年間、数百人の営業企画担当者の転職を支援してきた経験から言うと、営業企画は**「営業組織全体の生産性を上げるための頭脳」**です。現場で汗をかく営業担当者が最大の成果を出せるよう、戦略・仕組み・ツール・数字の面から総合的にサポートするのが仕事です。
地味に見えて、実は経営層と最も近い距離で働ける職種のひとつ。本記事では、その実態をあますところなく解説します。
1. 営業企画とはどんな職種か
「営業部門の参謀」という役割
営業企画は、営業組織が目標を達成するために必要な戦略・施策・仕組みを設計・推進する職種です。営業担当者が「どこに」「どう」「何を使って」アプローチするかを、データと市場分析に基づいて設計する役割を担います。
企業によって「営業推進」「セールスオペレーション」「営業戦略」「販促企画」などさまざまな名称で呼ばれますが、本質的な役割は共通しています。
営業(フィールドセールス)との違い
混同されがちですが、営業企画と営業(フィールドセールス)は明確に異なります。
| 項目 | 営業(フィールドセールス) | 営業企画 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 顧客に直接アプローチし契約を取る | 営業組織全体の戦略・仕組みを設計する |
| 評価軸 | 個人の売上目標達成 | 部門全体の生産性・目標達成率 |
| 主な相手 | 顧客 | 営業部門内・経営陣・他部門 |
| 時間軸 | 短期(案件単位) | 中長期(四半期・年間) |
企画営業との違い
「企画営業」は、既存商品に付加価値となる企画を添えて提案する営業スタイルのこと。あくまで「営業活動の一形態」です。一方、営業企画は「営業部門を支える機能・部門」であり、自ら顧客に直接売ることは基本的にありません。
2. 具体的な仕事内容
営業企画の業務は多岐にわたります。企業規模や業界によって比重は変わりますが、主な業務を体系的に整理するとこうなります。
(1) 営業戦略の立案
市場環境・競合動向・自社の強みを分析し、「今期どこに注力するか」「どのターゲットセグメントを優先するか」を設計します。経営方針を受け取り、それを現場が動けるレベルの施策に落とし込むのが核心です。
- 市場分析・競合調査・顧客セグメント分析
- 年間・四半期の営業戦略・方針策定
- 重点顧客・重点商材の選定
- 新規開拓エリア・業種の選定
(2) KPI設計・数値管理
営業組織の目標(KGI)を達成するために、どのKPIをどの水準で管理するかを設計します。「売上目標を達成するには、商談数・成約率・案件単価をそれぞれどう設定すべきか」を逆算で組み立てる仕事です。
- 売上目標・KPIの設定と管理
- 進捗モニタリングとアラートの仕組み構築
- 月次・週次レポートの作成と経営報告
- 未達原因の分析と改善施策の立案
(3) 販促施策・キャンペーンの企画・実行
営業現場が使う武器(施策・ツール・コンテンツ)を作る仕事です。「売れる環境」を整えることが目的です。
- キャンペーン・販促施策の企画立案と実行管理
- 営業ツール・提案資料・トークスクリプトの作成
- インセンティブ制度・営業コンテストの設計・運営
- 展示会・セミナーなどのイベント企画・運営支援
(4) 営業プロセスの改善・効率化
既存の営業フローを見直し、無駄を省いて生産性を高めます。SFAやCRMなどのツール導入・運用も担うことが増えています。
- 営業プロセスの可視化・標準化
- SFA/CRM(Salesforce、HubSpotなど)の導入・運用・定着推進
- 成功事例の横展開・ナレッジ共有の仕組み構築
- 業務フローの整備とマニュアル化
(5) 社内調整・プロジェクト推進
営業企画が最も苦労する仕事のひとつが、関係部門との調整です。マーケティング・商品開発・カスタマーサクセス・経営企画など、複数部門を巻き込みながら施策を推進します。
- 営業部門と経営層の橋渡し
- マーケティング・商品部門との連携
- 新商品・新施策の全社展開における調整
3. 営業企画に必要なスキル
必須スキル
データ分析力 数字を読み、仮説を立て、施策に落とし込む力は絶対に必要です。Excelは当然として、BIツール(Tableau、Looker Studio)やSQLの基礎があれば大きな武器になります。
営業現場への深い理解 「現場を知らない企画は絵に描いた餅」という言葉はどの企業でも聞きます。自分が営業経験を持っていることが最大の強みになる職種です。
コミュニケーション・調整力 複数部門を横断して動く仕事のため、関係構築力・利害調整力・交渉力が不可欠です。「上に対しても下に対しても話せる人」は非常に重宝されます。
論理的思考力・資料作成力 戦略を経営陣に説明する機会が多く、PowerPointやKeynoteを使った質の高い資料作成は必須スキルです。
プロジェクトマネジメント力 複数施策を同時並行で進めることが多く、タスク管理・スケジュール管理・優先順位付けの能力が求められます。
あると差がつくスキル
- Salesforce/HubSpotなどのCRM/SFA操作経験
- SQL・BIツールを用いたデータ分析
- 統計の基礎知識(回帰分析・検定など)
- 予算管理・P&Lの読み方
- PMPなどプロジェクトマネジメント資格
4. 年収帯
企業規模・業界・役職によって幅があります。以下は2024〜2025年の求人データをもとにした目安です。
| 役職・レベル | 年収帯の目安 | 主な経験年数 |
|---|---|---|
| 担当者(第二新卒・若手) | 350万〜500万円 | 〜3年 |
| 担当者(中堅) | 500万〜700万円 | 3〜7年 |
| 主任・リーダー | 600万〜800万円 | 5〜10年 |
| マネージャー・課長 | 700万〜1,000万円 | 8年〜 |
| 部長・本部長 | 900万〜1,500万円以上 | 12年〜 |
転職市場における営業企画の平均年収は、JACリクルートメントのデータでは約847万円(ハイクラス案件が多いため高め)、求人ボックスのデータでは企画営業を含めた広義で約488万円と、参照するデータソースによって幅があります。
実態として、20代後半〜30代前半の転職では500万〜700万円、経営企画との兼務や事業責任を持つポジションでは1,000万円超も現実的です。IT・製薬・金融などデータドリブンな業界のほうが年収水準は高い傾向があります。
5. 向いている人・向いていない人
向いている人
営業経験があり、「仕組み」で解決したい人 「自分が頑張るより、チーム全体が勝てる仕組みを作りたい」という動機を持つ元営業担当者は、非常に向いています。現場感覚があるうえに企画の視点を持てるため、転職市場でも高く評価されます。
数字とロジックで考えるのが好きな人 感覚ではなくデータに基づいて仮説を立て、施策を設計し、効果を検証する作業が中心です。「なぜ売れたのか、なぜ売れなかったのか」を因数分解するのが好きな人にとっては天職です。
複数のプロジェクトを同時進行できる人 キャンペーン企画・KPI管理・ツール導入・他部門調整を並行して進めることが多く、マルチタスクが苦にならない人に向いています。
変化を楽しめる人 市場環境・経営方針・競合の動きに合わせて施策を柔軟に変える必要があります。決まったルーティンより、常に試行錯誤できる環境を好む人に向いています。
視座の高い仕事がしたい人 「自分の数字」ではなく「組織全体の数字」を動かす仕事です。経営に近い視点で働きたい人、将来的に経営企画や事業責任者を目指している人にとっては格好のキャリアステップになります。
向いていない人
- 単独で顧客と向き合い、自分のペースで動くことを好む人
- 社内調整・関係構築より、顧客折衝のほうが圧倒的に得意な人
- 短期的な「受注の達成感」を最大のモチベーションにしている人
- 定量的な仮説検証より、直感やフィジカルの強さで勝負したい人
6. キャリアパス
営業企画は「出口の多い職種」です。得られるスキルセットが幅広く、複数の方向にキャリアを広げられます。
(1) 営業企画のままグレードアップ
担当者 → リーダー → マネージャー → 部長・本部長という社内昇進が最もオーソドックスなルートです。事業規模の大きな企業・業界のトップ企業に転職することで、同じ「営業企画」でも年収・影響範囲を大幅に広げられます。
(2) 経営企画・事業企画へ
営業企画で培った「全社数値の管理」「経営層との折衝」「戦略立案」のスキルは、経営企画・事業企画への転身に直結します。特に「中長期計画の策定経験」「M&A・新規事業への関与」があると、ハイクラス転職で高く評価されます。
(3) マーケティングへ
販促施策・顧客セグメント分析・コンテンツ制作経験を持つ営業企画は、マーケティング部門にスライドしやすいです。「ビジネスサイドの感覚を持つマーケター」として重宝されます。
(4) 事業開発・新規事業
営業企画で「市場分析 × 戦略立案 × 社内推進」を経験した人は、新規事業の立ち上げ役として声がかかることも多いです。スタートアップのBizDev(事業開発)ポジションへの転職実績も増えています。
(5) 独立・コンサルタント
営業組織の構築・改善を支援するコンサルタントとして独立するケースもあります。特にSalesforceなどCRM/SFAの実装・運用経験があれば、企業向けの営業DX支援コンサルタントとして高単価で活動できます。
7. 転職市場の状況(2025〜2026年)
求人数・需要の動向
営業企画の求人数は近年増加傾向が続いています。背景には以下の要因があります。
データドリブン経営の浸透 KPIを可視化し、データに基づいて営業施策を打つ文化が広がり、「感覚営業」から「科学的営業」への転換を推進できる人材の需要が高まっています。
SFA/CRM導入企業の増加 Salesforce・HubSpotなどを導入したものの使いこなせていない企業が多く、「ツールを活かして組織を変えられる人」へのニーズが急増しています。
営業組織のデジタル化(セールスDX) インサイドセールス・MA(マーケティングオートメーション)・ABM(アカウントベースドマーケティング)など新しい手法の浸透に伴い、それを設計・推進できる営業企画人材の価値が上がっています。
採用で評価されるポイント
転職支援の現場で「この候補者は強い」と感じる特徴を挙げます。
- 営業現場の経験 + 企画経験の両方を持っている(現場感と俯瞰力の両立)
- 施策の成果を数値で説明できる(「この施策で売上が〇%向上した」レベル)
- Salesforceなどのツール活用経験がある
- 他部門を巻き込んで推進した実績がある
- 経営層へのレポーティング経験がある
転職難易度
営業企画は「未経験歓迎」の求人が少なく、中途採用では即戦力を求める傾向が強いです。ただし、「営業経験者が初めて営業企画に挑戦する」ポジションは一定数あり、特に業界知識・顧客理解が評価されます。
第二新卒での転職は難易度が高め。まず営業で実績を積んだうえで、社内異動か転職で营業企画に移行するルートが現実的です。
8. まとめ
営業企画は、営業のキャリアに行き詰まりを感じた人・もっと俯瞰的に組織を動かしたい人にとって、非常に魅力的なキャリアの選択肢です。
この職種の本質は「営業現場の課題を構造的に解決すること」。現場を知っているからこそ設計できる戦略があり、データを読めるからこそ動かせる組織があります。
転職の観点から言うと、「なぜ営業企画に移りたいのか」「これまでの営業経験でどんな課題感を持ち、何を変えたかったのか」を言語化できる人が、面接で圧倒的に強い印象を残します。
キャリアの方向性に迷っている方は、ぜひ一度、自分が「動かされる側」から「動かす側」に回ることを想像してみてください。
参照情報源
- 営業企画とはどんな職種?仕事内容/給料/転職事情を解説 - doda職種図鑑
- 営業企画とは?役割やキャリアパスを転職のプロが解説 - doda X
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- 営業企画とは?仕事内容や魅力、活かせるスキルについて - マイナビ転職エージェント
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