乾汽船とは?会社の基本情報

乾汽船株式会社は、東京都中央区に本社を置く東証スタンダード上場の外航海運・総合物流企業です。その歴史は1908年に遡り、旧乾汽船の前身企業が設立されました。1925年に現在のグループの源流となるイヌイ倉庫が設立され、2014年にイヌイ倉庫株式会社と旧乾汽船株式会社が合併して現在の乾汽船株式会社が誕生しています。

外航海運・倉庫・不動産という3つの事業柱を持ち、創業120年超の歴史の中で積み上げたネットワークと専門知識を強みとしています。

企業概要

項目内容
正式社名乾汽船株式会社
英語名INUI GLOBAL LOGISTICS Co., Ltd.
設立1925年10月19日
本社所在地東京都中央区
代表者乾康之(代表取締役社長)
資本金約27億6,700万円
売上高約336億3,600万円(2026年3月期・連結)
従業員数連結188名・単体82名(2026年3月31日現在)
上場区分東証スタンダード市場(証券コード:9308)
決算期3月31日
事業セグメント外航海運事業・倉庫事業・不動産事業
主要子会社イヌイ倉庫オペレーションズ株式会社(倉庫事業)

主な事業内容

1. 外航海運事業(主力)

バラ積み船を用いた外航海運が乾汽船の根幹事業です。主な輸送品目は穀物(北米・カナダ・オーストラリア産)・木材(北米・ニュージーランド産)・石炭・セメントなど。農業・食品・建設資材といった生活インフラを支える貨物を世界中から日本へ運ぶ役割を担っています。

自社船の運航に加え、連結子会社や同業他社への船舶貸渡業(用船)も行っています。海上運賃市況(BDI:バルチック乾貨物運賃指数)に収益が連動するため、市況変動リスク管理が重要な経営課題です。

主なサービス・取扱品目

  • バラ積み船による外航海運(穀物・木材・石炭・セメント等)
  • 船舶貸渡業(タイムチャーター・スポットチャーター)
  • 海上保険・傭船手続き
  • 通関・港湾手続きサポート

2. 倉庫事業(イヌイ倉庫グループ)

イヌイ倉庫オペレーションズ株式会社を中核とした倉庫・物流事業です。海上輸送で届いた貨物の受け取りから保管・配送まで一貫して対応できる体制を持ち、特に輸入品の通関後保管・流通加工に強みがあります。

文書保管サービス(書類の長期保管・管理)も手がけており、企業のバックオフィス需要にも応えています。

主なサービス内容

  • 普通倉庫・危険品倉庫での保管業務
  • 海上・航空貨物の受渡・通関サポート
  • 流通加工(仕分け・梱包・ラベリング)
  • 文書保管・管理サービス
  • ドメスティック配送・ラストワンマイル

3. 不動産事業

自社保有の土地・建物を活用した不動産賃貸事業を展開しています。海運・物流事業の景気変動を補完する安定収益源として機能しており、テナント賃料収入が経営の下支えになっています。

乾汽船の強み

強み1:外航海運×倉庫の垂直統合モデル

船で運んだ貨物をそのまま自社倉庫で受け取り、加工・保管・配送まで一気通貫で提供できる体制は、外航海運会社として稀な競争優位です。荷主(輸入業者・商社)にとっては「一社で海から棚まで完結する」利便性が高く、長期的な取引関係の構築につながっています。

強み2:創業100年超で積み上げたグローバルネットワーク

北米・オーストラリア・ニュージーランド・東南アジアなど世界各地の荷主・船会社・港湾代理店とのリレーションシップは、100年超の歴史の中で積み上げた無形資産です。新規参入者が短期間で模倣することは極めて困難な参入障壁として機能しています。

強み3:少数精鋭による高い一人当たり生産性

単体従業員数82名に対して売上高300億円超という事業規模は、一人あたりの生産性・営業利益率の高さを示しています。少数の専門家が高付加価値業務に集中できる体制が維持されており、これが平均年収900万円超という高水準の報酬を支えています。

強み4:3事業によるリスク分散と安定経営

海運市況変動に左右されやすい外航海運の収益変動を、賃料収入が安定した不動産事業と着実な倉庫事業が補完する構造です。海運のサイクル不況期においても会社全体の収益が極端に悪化しにくい複合収益モデルを採用しています。

強み5:バラ積み船専門の深い実務ノウハウ

穀物・木材・石炭・セメントなど品種ごとに積み付け方法・ハッチ管理・積荷損傷リスクが異なるバラ積み貨物の専門知識を蓄積しています。ドライバルク専業で長年実績を積んできたことで、トラブル対応・傭船交渉・コスト最適化において他社に比べて高い実行力を持ちます。

強み6:文書保管という安定ニッチ事業

倉庫事業の中に「文書保管」という差別化されたニッチが存在します。企業の法定保管書類や重要文書の長期保管ニーズは景気変動に影響されにくく、一度顧客が入れば解約率も低い粘着性の高いビジネスモデルです。

乾汽船の年収事情

乾汽船の平均年収は約900〜929万円と報告されており、海運業界の中でも上位水準に位置します。

年代別年収目安

年代年収目安
25〜29歳約594万円
30〜34歳約700〜800万円
40〜44歳約900〜1,000万円
50〜54歳約1,000万円前後
55〜59歳約1,035万円

役職別年収目安

役職年収目安
一般社員550〜750万円
主任・係長クラス750〜950万円
課長クラス950〜1,200万円
部長・役員クラス1,200万円〜

給与制度の特徴

給与・賞与は同業海運会社の中でも高水準との口コミが複数見られます。家賃手当・家族手当などの福利厚生手当が充実しており、基本給に各種手当を加えると実質的な生活水準は数字以上に安定しています。海運業の特性上、業績連動の賞与があり、海上運賃市況が好調な年は賞与が大きく跳ね上がる傾向があります。

乾汽船の働き方・福利厚生

項目内容
年間休日約120日前後
有給休暇10〜20日(勤続年数に応じて付与)
残業時間月平均20〜35時間程度
育児休業法定取得可能
社会保険健康保険(船員保険含む)・厚生年金・雇用保険・労災
退職金制度あり
通勤手当実費支給
家族手当あり(充実との口コミ複数)
家賃手当あり(充実との口コミ複数)
海外出張外航部門では定期的にあり
語学支援英語研修・海外業務対応支援

海運業務の性質上、国際電話・メール対応が早朝・夜間に発生することもありますが、本社スタッフ職は比較的規則的な勤務が可能です。倉庫部門は現場シフト制の場合があります。

乾汽船の社風・カルチャー

従業員数が少ない分、一人ひとりが幅広い業務に関わる「ゼネラリスト的スペシャリスト」の育成を重視する文化があります。大手海運会社(日本郵船・商船三井・川崎汽船等)のような大規模な組織体系ではなく、少人数チームで意思決定が速い点が特徴です。

口コミでは「給与・賞与は同業の中で高水準」「家賃手当・家族手当が充実」といった待遇面への満足が多く見られます。一方で、少数精鋭のため一人あたりの業務負荷が高く、自律的に動ける人材が評価される環境です。英語を使う機会が多く、国際ビジネスに関わりたい人には刺激的な職場です。

乾汽船の転職難易度

難易度:A級(難しい)

乾汽船は年間の採用数が非常に少なく、欠員補充型かつ高い専門性を求める選考が特徴です。海運・物流・貿易の専門知識がない場合は書類選考の段階でハードルが高くなります。

観点評価
採用人数極めて少数(年間数名規模)
倍率高め(推定10〜20倍以上)
即戦力要求非常に高い(海運・物流・貿易実務経験者優先)
未経験歓迎原則なし(倉庫部門は一部例外あり)
英語力TOEICスコアよりも実務英語力を重視
学歴フィルター明確な記載なし(大卒以上が現実的)

海運専業経験者・傭船業務経験者・貿易実務経験者・倉庫管理経験者が最も評価されます。

乾汽船に向いている人

  • 外航海運・貿易・物流のプロフェッショナルとしてキャリアを築きたい人
  • 少数精鋭の環境で幅広い裁量を持ちながら働きたい人
  • 英語を使いながらグローバルな業務に携わりたい人
  • 高い年収水準と専門性の深化を両立したい人
  • 安定した大企業よりもスピーディな意思決定環境を好む人
  • 海運・物流のサイクルビジネスに理解があり、市況変動を楽しめる人

乾汽船に向いていない人

  • 海運・物流・貿易の実務経験がない人(採用ハードルが非常に高い)
  • 英語対応に抵抗感がある人
  • 組織的な研修体制・ジョブローテーションを期待する人
  • 知名度の高い大企業ブランドでキャリアを積みたい人
  • 業績連動の賞与変動が大きい給与体系が不安な人

乾汽船の選考対策

戦略1:海運・物流の専門知識を体系的に整理する

面接では業務経験の深さを問われます。バラ積み船の特性・BDI(バルチック指数)・傭船形態(タイムチャーター・ボイジャーチャーター)・通関手続きなど、業界基本知識を正確に説明できるよう準備してください。業界誌(カーゴニュース・海事プレス等)も事前に読んでおくと好印象です。

戦略2:英語の実務経験を具体的に示す

外航部門では日常的に英語での交渉・書類作成が発生します。「TOEICスコア」よりも「英語で船主・荷主と交渉した経験」「英文B/L・傭船契約書を作成した経験」など実務的なエピソードを準備しましょう。

戦略3:なぜ乾汽船かを深掘りする

「外航海運×倉庫の垂直統合」という乾汽船独自の強みに言及し、「なぜ大手3社ではなく乾汽船を選ぶのか」に明確な答えを用意してください。少数精鋭で裁量が大きい点や、バラ積み専業の深い専門性など、具体的な魅力を語れるかどうかが差別化のポイントです。

戦略4:業績変動への理解と覚悟を示す

海運業は市況変動が大きく、不況期には業績が大幅に悪化することがあります。この点を「リスク」としてではなく「業界の特性として理解した上で長期的に関わりたい」という姿勢で伝えることが重要です。

戦略5:少数精鋭環境でのセルフマネジメント力をアピール

大きな組織に守られず、自分で優先度を判断して動く経験を具体的にアピールしてください。「指示待ちでなく能動的に課題を発見し解決してきた」行動事例が評価されます。

戦略6:倉庫・文書保管事業への関心も示す

外航海運だけでなく、倉庫事業・文書保管事業にも関心を持ち、グループ全体での貢献を語れると視野の広さを示せます。特に倉庫事業は採用の窓口が比較的広いため、キャリアの入り口として活用できる場合もあります。

乾汽船への転職で評価されやすい経験

  1. 外航海運会社での傭船・運航管理業務経験
  2. 貨物輸送ブローカー・シッピングエージェントでの就業経験
  3. バラ積み船(ドライバルク)に関する専門知識
  4. 英語での荷主・船主交渉・英文書類作成経験
  5. 輸出入通関業務の実務経験(通関士資格があればなお可)
  6. 倉庫管理・在庫管理(WMS操作含む)の実務経験
  7. 3PL・フォワーダーでの国際物流コーディネート経験
  8. 海外駐在・海外業務折衝の経験
  9. TOEIC 700点以上(目安、実務英語力が重視)
  10. BDI・海上運賃市況分析の実務経験
  11. 文書管理・情報資産管理の専門知識
  12. 不動産管理・施設管理の経験(不動産事業部門志望者)
  13. リスクマネジメント・海上保険の知識
  14. 損益管理・原価計算(傭船コスト分析等)の経験
  15. 中国語・東南アジア語など第二外国語スキル

他社との比較:乾汽船を選ぶ理由

外航海運業界の主要プレーヤーとの比較で乾汽船の立ち位置を整理します。

比較軸乾汽船大手3社(NYK・MOL・K-Line)中堅海運専業
規模感中小(連結188名)超大規模(数千〜数万名)中程度
専門分野バラ積み特化タンカー・コンテナ・バラ積み等多様各社異なる
一人当たりの裁量非常に大きい分業制で小さい大きい
年収水準約900〜930万円700〜1,000万円(職種で差)500〜800万円
海外駐在の有無限定的多い会社による
専門性の深さ高い(ドライバルク特化)広く深い業種次第

「世界中を飛び回るのではなく、バラ積み専門家として深い知識を蓄えたい」「大手の硬直した組織より少数精鋭で裁量を持ちたい」という人に特に向いています。

乾汽船で描けるキャリアパス

乾汽船で積んだ経験は業界内での市場価値が高く、以下のような発展が期待できます。

1. 外航海運スペシャリストルート 傭船・運航管理のプロとして業界内での認知度を高め、海運会社間の中途採用市場で希少な即戦力として評価されます。経験年数が上がるにつれ年収は1,000万円超を視野に入れられます。

2. グローバル物流コーディネータールート 外航海運の経験に倉庫・通関・フォワーディングの知識を加えることで、輸入サプライチェーン全体を設計・管理できる人材に成長できます。

3. 事業管理・CFO補佐ルート 少数精鋭のため財務・経営企画に近い業務に携わる機会があります。市況分析・コスト管理・リスクヘッジの経験は、海運以外の業界でも通用するポータブルスキルです。

海運業界は景気サイクルが大きいものの、長期的には世界貿易量の拡大とともに需要が底堅い業種です。乾汽船で培った専門性は長く価値を保ちます。

まとめ

乾汽船は、創業100年超の老舗外航海運会社が倉庫・不動産と融合して生まれた、海運業界でも独自のポジションを持つ企業です。平均年収約900〜930万円という高水準の報酬、少数精鋭による広い裁量、グローバルな仕事内容は、海運・物流のプロフェッショナルにとって非常に魅力的な職場環境です。

採用のハードルは高く、海運・貿易・物流の実務経験なしでの入社は現実的ではありません。しかし、経験とスキルが合致すれば、業界水準を大きく超える報酬と専門性の深化が期待できます。

転職を検討する際は、海運専門のエージェントや総合型エージェントの海運・物流担当に相談することで、非公開求人の情報収集や選考対策のサポートを受けやすくなります。ぜひキャリア戦略の選択肢として乾汽船を深く検討してみてください。


転職エージェントからのひとこと 乾汽船の求人は公開市場に出ることが少なく、ほとんどが紹介ルートまたは非公開求人での採用です。海運・物流の実務経験があるなら、エージェントへの相談が採用情報を得る最短経路になります。年収水準・裁量の大きさともに魅力的な環境ですので、海運業界でのキャリアを模索している方はぜひ候補として検討してください。