電池材料の世界では、エネルギー密度・充放電速度・サイクル寿命の三つのトレードオフを同時に改善できる材料が永遠の課題だ。現在主流の黒鉛系炭素材料は安価で安定しているが、エネルギー密度の上限に近づいており、次世代EV・蓄電デバイスの需要に応えきれなくなりつつある。
株式会社3DC(スリーディーシー)が提供する「Graphene MesoSponge®(GMS)」は、その課題を材料設計の次元から解決しようとしている。グラフェン(炭素の原子一層の薄膜)をスポンジ状の三次元構造に組み上げ、高電圧耐性・電解液輸送性・圧縮柔軟性を同時に達成した。東北大学AIMRでの長年の研究成果を核に、2022年の創業から量産品の出荷(2024年2月)・CES 2026出展・累計56億円超の調達(2026年3月時点)と、ディープテックとしては異例のスピードで産業実装フェーズへと移行している。
社名「3DC」は「3次元炭素(3D Carbon)」を意味し、GMSの三次元グラフェン構造そのものを社名に込めている。東北大学AIMRの西原洋知教授(CTO兼任)と、連続起業家の黒田拓馬CEO(元サムライインキュベート)という科学者と事業家の最強の組み合わせが、同社の技術と経営の両輪を支えている。
企業概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社3DC(英: 3DC Inc.) |
| 設立 | 2022年2月 |
| 代表取締役 CEO | 黒田拓馬 |
| 代表取締役 CTO | 西原洋知(東北大学AIMR教授兼任) |
| 本社所在地 | 宮城県仙台市青葉区片平2-1-1 東北大学産学連携先端材料研究開発センター(MaSC)2F |
| サテライト拠点 | 神奈川県川崎市(川崎事業所)、岐阜県土岐市(量産・パイロット工場) |
| 資本金 | 8億2,504万8,800円(登記情報ベース、2025年7月時点) |
| 従業員数 | 約30名(非公式情報。2025年時点) |
| 上場区分 | 非上場(未上場) |
| 売上高 | 非公開 |
| 平均年収 | 非公開(求人票掲載例:生産技術マネージャー800万円〜) |
| 平均年齢 | 非公開 |
| 勤続年数 | 非公開(2022年設立のため最長4年程度) |
| 事業内容 | 次世代炭素材料Graphene MesoSponge®の研究・開発・製造・販売 |
3DCは東北大学の知的財産を核とした産学連携型スタートアップだ。CTOの西原洋知教授が東北大学AIMRで発明したGMSを社会実装するために設立され、本社を東北大学の産学連携拠点(MaSC)内に置く。仙台の本社に加え、川崎(事業開発・プロダクトマネジメント)と岐阜(量産工場)に拠点を展開する三拠点体制だ。
資本金は登記情報ベースで8億2,500万円程度だが、累計エクイティ調達額は28億円超に達している。この差は優先株式設計によるもので、累計調達規模は登記上の資本金より大きい。2026年3月のシリーズA第2クローズをもって、エクイティ調達28億円超・助成金28億円超の計56億円超という、設立4年のスタートアップとしては大きな資金基盤を確立している。
主な事業内容
3DCの事業は一点集中型だ。東北大学発の独自材料「Graphene MesoSponge®(GMS)」の製造・販売を核に、電池材料市場の複数のセグメントへの展開を図っている。
Graphene MesoSponge®(GMS)の製造・販売
GMSは壁厚が原子1個分(単層グラフェン)の三次元スポンジ状多孔質炭素材料だ。グラフェン層数・構造形状・細孔径・弾性をナノスケールで精密制御できるため、用途に応じた特性設計が可能だ。CES 2026で発表した製品ラインナップは以下の通り:
- BAシリーズ:シリコン負極向け導電助剤グレード
- BKシリーズ:触媒担体向けグレード
- BEシリーズ:電池全般向け汎用グレード
- IBISシリーズ:電池・クッション材向けグレード
2024年2月よりリチウムイオン電池向け導電助剤グレードの出荷を開始しており、研究サンプルから量産品への移行が完了している。
リチウムイオン電池(LIB)向け電極材料開発
LIBの導電助剤(電極内で電子伝達を助ける添加剤)としてのGMS応用が主軸だ。従来の導電助剤(カーボンブラック・カーボンナノチューブ等)に比べ、GMSは高い電子伝導性と電解液の浸透性を兼備するため、充放電速度と容量の両面での改善効果が期待される。愛知工業大学との共同研究でも導電助剤としての有効性が確認されている。
次世代電池への応用研究
シリコン負極(黒鉛の約10倍のリチウム貯蔵容量を持つが膨張収縮が大きい)の課題解決材料としての応用、全固体電池・燃料電池向け電極材料としての研究も推進している。現代自動車グループのCVC(ZER01NE Ventures)が出資したことは、EV向け電池材料としての評価が進んでいることを示唆している。
量産プロセス技術の開発
岐阜県土岐市の量産・パイロット工場でGMSの大量生産技術を確立することが現在の最重要課題だ。東邦アセチレン(GMS量産化・電池分野での事業連携で出資)・高砂工業(熱処理設備メーカーで出資)という製造業の専門家からの資本と技術支援を得て、量産コストの低減と品質の安定化を進めている。
株式会社3DCの強み
強み1. 世界初の精密制御グラフェン材料という技術的独自性
GMSの最大の強みは、三次元グラフェン構造のナノスケール精密制御という世界初の技術だ。グラフェン自体は1990年代以降に注目されてきたが、三次元スポンジ状構造を量産レベルで制御する技術はGMSが世界最初とされる。
この制御能力により、顧客の用途に応じて細孔径・層数・弾性をカスタマイズできる。「材料を売る」だけでなく「材料設計から応用まで顧客と協働する」事業モデルが可能であり、単純なコモディティ材料とは異なるポジションを確立できる。転職者の観点から見れば、世界に存在しない材料の設計・製造に関わるという経験は、材料科学エンジニアとしての市場価値を大きく高める。
強み2. 東北大学AIMRという世界トップクラスの研究基盤
東北大学AIMRは材料科学の世界最高峰の研究機関の一つだ。CTOの西原洋知教授がAIMRに所属し続けながら3DCのCTOを兼任するという産学連携の形態は、最新の研究成果を事業に直接注入できる強固な仕組みだ。
単なるライセンス契約による技術移転とは異なり、研究者が経営に直接関わることで、技術的判断の精度と速度が高まる。また、東北大学ブランドは採用・取引先・投資家へのシグナリング効果があり、ディープテック企業としての信頼性を高める。
強み3. 累計56億円超の多様な調達構成
エクイティ28億円超+助成金28億円超という二本柱の資金基盤は、スタートアップとしては盤石だ。特にNEDO DTSU(ディープテック・スタートアップ支援事業)のPCAフェーズ(2025〜2027年度、最大10億円)は、政府が3DCの技術を戦略的に支援していることを意味する。
投資家構成の多様性も際立つ。ANRI(日本のトップVCの一つ)・三菱UFJキャピタル・ソニーイノベーションファンド・七十七キャピタル(地域金融)・ZER01NE Ventures(現代自動車CVC)・東邦アセチレン・東亞合成(素材メーカー)という顔ぶれは、財務資本に加え、販路・製造ノウハウ・海外展開という事業的な資産が人脈として蓄積されていることを示す。
強み4. Forbes Japan選出・CES出展によるブランド認知
Forbes Japan「JAPAN'S EMERGING DEEPTECH 30」(2026年2月号)への選出は、日本のディープテック起業家・投資家コミュニティでの認知度を高めた。CES 2026(ラスベガス)への出展は、グローバルな自動車・電池メーカーへの技術PR機会として機能し、現代自動車CVCとの繋がりもこの文脈で評価できる。
こうした外部認知は、優秀な人材の採用・大企業との協業交渉・新たな投資家獲得のサイクルを加速させる。注目スタートアップとして認定されている現時点は、早い段階でチームに加わるチャンスでもある。
強み5. 製造業の専門家を株主として迎えた量産体制構築
東邦アセチレン(電池分野での量産連携目的)・高砂工業(熱処理設備の専門メーカー)という実際の製造業のプレイヤーが株主として参加していることは、GMSの量産化において決定的な強みだ。アカツキ・ソニーという異なる業界からの投資とは異なり、製造ノウハウそのものを持つプレイヤーとの連携は、スタートアップが最も苦手とする「量産の壁」を乗り越えるための実践的な支援を意味する。
岐阜の量産・パイロット工場の立ち上げは、2022年設立の企業が2024年時点で量産品を出荷できていることを考えると、この製造業パートナーシップの効果が早速表れていると評価できる。
強み6. EV市場の成長と炭素材料需要の構造的追い風
世界的なEV普及の加速は、電池材料の需要を構造的に押し上げる。IEAの予測では2030年までに世界のEV保有台数は大幅に増加する見込みであり、電池性能の向上への要求は強まるばかりだ。GMSが対象とする導電助剤・シリコン負極という市場セグメントは、まさにその改善需要の核心にある。
ゼロカーボン(GX)という政策的な方向性も追い風だ。3DCはNEDO GX STSフェーズ・GX関連助成金を複数採択されており、政府の支援枠組みの中で事業を展開できる。炭素材料という分野がサステナビリティ文脈でも評価される点も、ESG投資家からの資金調達において有利に働く。
株式会社3DCの年収事情
非上場スタートアップのため、公式の平均年収データは公開されていない。確認できた求人情報をもとに推定できる範囲を示す。
職種別の想定年収レンジ
| 職種 | 想定年収レンジ | 備考 |
|---|---|---|
| 生産技術マネージャー(岐阜) | 800万円〜 | AMBI掲載情報(明記あり) |
| 材料開発エンジニア(R&D) | 600万〜900万円程度(推定) | 公開情報から推定 |
| プロダクトマネージャー(川崎) | 700万〜1,000万円程度(推定) | 公開情報から推定 |
| 生産技術エンジニア(岐阜) | 500万〜800万円程度(推定) | 公開情報から推定 |
| 研究職(仙台) | 500万〜800万円程度(推定) | 公開情報から推定 |
| 事業開発・営業 | 非公開 | 公開情報なし |
給与制度の特徴
確認できる求人情報では生産技術マネージャーの年収が「800万円〜」と明記されており、技術系マネージャーポジションでは相対的に高い水準が提示されている。シリーズAを完了した調達規模を考えると、主要職種での待遇水準は一定程度確立されているとみられる。
ストックオプション制度の詳細は公開情報では確認できないが、シリーズA後のスタートアップとして制度が整備されている可能性が高い。入社時の株式報酬の条件は、採用プロセスで直接確認することを推奨する。
年収を見る際の注意点
- 生産技術マネージャー以外の職種の年収は公開情報から確認できず、上記の推定値は幅広い誤差がある
- スタートアップ段階では固定給以上にストックオプションの将来価値が重要になる場合がある
- 拠点(仙台・川崎・岐阜)によって生活コストが大きく異なるため、実質的な収入水準は居住地とセットで検討すべき
- 累計56億円超の調達基盤は比較的安定しているが、量産化の進捗によって財務状況は変化する
株式会社3DCの働き方・福利厚生
勤務時間・休日
公開された勤務条件の詳細は限られているが、研究開発職においてはフレックス的な時間管理が期待される。量産工場(岐阜)のオペレーション職では製造ラインのスケジュールに合わせた勤務形態になる可能性がある。完全週休2日制(土日祝)が基本とみられる。
リモートワーク・マルチ拠点
仙台(本社・研究)・川崎(事業開発・PM)・岐阜(量産工場)の三拠点体制であり、職種によって主要拠点が異なる。研究職は仙台、プロダクトマネジメント・事業開発は川崎、生産技術は岐阜が主拠点になる。拠点間の移動やリモートでの連携については採用時に確認を推奨する。
主な福利厚生・制度
- 社会保険完備(雇用・労災・健康・厚生年金)
- 東北大学産学連携拠点(MaSC)内の研究施設利用(本社)
- NEDO支援採択企業・GX推進事業者としての各種支援プログラム利用
- 学会発表・学術活動支援(研究職)
- 産前産後・育児休業制度(法定)
- 交通費支給
- 拠点が複数あるため、転居補助・住宅手当の確認を推奨
注意点
約30名規模の組織であるため、福利厚生の制度面は大企業に比べて整備途上の面がある。量産工場の立ち上げという急成長フェーズにあるため、職種によっては繁忙期の業務強度が高くなる可能性もある。制度の詳細は選考プロセスで直接確認してほしい。
株式会社3DCの社風・カルチャー
一言で表すなら「科学の誠実さと事業の野心が共存するディープテック集団」
3DCのカルチャーを一言で表すなら「炭素材料で100年先も通用するサステナブルな未来を本気で作ろうとしている」だ。「100年先もクリーンなエネルギーを世界に届ける」というミッションはスタートアップによくある大言壮語ではなく、東北大学30年超の研究成果を背景とした技術的な自信に裏打ちされている。
代表の黒田拓馬CEOはサムライインキュベートでの起業支援経験を持つ事業家であり、CTOの西原洋知教授は世界トップレベルの材料科学者だ。この組み合わせは「科学的な誠実さ(データと証拠に基づく意思決定)」と「事業家的な野心(ビジネスとしての成功)」が共存するカルチャーを生んでいる。
評価される人物像
東北大学・CES・NEDOという文脈が示す通り、3DCが評価するのは「専門知識の深さ」と「不確実性下での行動力」の両方を持つ人材だ。材料科学・電気化学・製造技術の専門家として自分の分野に自信を持ちながら、スタートアップ特有の「ゼロから仕組みを作る」「ピボットもある」環境に順応できる柔軟性が求められる。
量産化という実利的な目標と、次世代電池材料という長期的なビジョンの両方をモチベーションとして持てる人材が、3DCのカルチャーフィットを生みやすい。
表面的なイメージと実態の差
「グラフェンスタートアップ」という言葉から、まだ研究段階の夢の素材を扱う会社という印象を持たれることがある。しかし2024年2月から量産品の出荷を開始しており、3DCは研究フェーズを卒業して製造業としての側面を強めている。岐阜の工場立ち上げ・生産技術の確立が現在の最重要課題であり、「研究よりも量産・品質管理・顧客サポート」という実業的な仕事のウェイトが増している段階だ。「基礎研究の自由な探索」より「材料を安定して大量に届ける」ことへのコミットが現在は強く求められる。
株式会社3DCの転職難易度
難易度:A〜S級
3DCへの転職難易度は、職種によって大きく異なる。材料開発・電気化学・生産技術の専門職では、電池材料領域の実務経験が事実上の必須要件となり難易度は高い。一方、事業開発・プロダクトマネジメント・製造マネジメントでは、異業種からの参入余地が相対的にある。
ただしいずれの職種でも、ディープテック分野への深い興味・理解と、スタートアップ環境への適性が選考で問われる。「電池が重要だから来た」という程度の動機では通りにくく、「この材料でこの問題を解決したい」という明確な技術的意志が求められる。
理由1. 電池材料領域の専門知識の要求水準が高い
GMSの応用先である電池材料(導電助剤・シリコン負極・全固体電池電極等)は、電気化学・材料工学・界面科学の高度な知識が必要な分野だ。電池メーカー・電極材料メーカー・研究機関での経験が直接的なアドバンテージになる。電池とは無縁のバックグラウンドからの転職は、研究職・開発職では厳しい。
理由2. 量産化フェーズへの移行が求める即戦力性
2022年設立から量産品の出荷(2024年2月)という速さは、現在の3DCが「仕組みを作りながら走る」段階にあることを意味する。採用した人材がすぐに生産技術の問題解決・工程改善に貢献できる即戦力性が求められており、「入社してから学ぶ」余裕は限られている。
理由3. 約30名という小規模組織ゆえの採用数の少なさ
30名程度の組織では年間の採用数がごく限られる。求人が出るタイミングは限られており、公開求人を見かけた際にスピーディーに動く必要がある。スタートアップ特有の「採用基準が厳格だが採用数は少ない」という構造への理解が必要だ。
株式会社3DCに向いている人
タイプ1. 電気化学・電池材料に深い知識を持つ研究者・エンジニア
リチウムイオン電池・全固体電池・燃料電池等の電極材料・電解質に精通した人材は、3DCが最も必要とするプロフィールだ。カーボンブラック・CNT・シリコン負極等の導電助剤・負極材料に関する実務・研究経験があると即戦力として機能しやすい。
タイプ2. 炭素系材料(グラフェン・CNT・カーボン)の専門家
グラフェン・カーボンナノチューブ・活性炭等の炭素系機能材料の合成・評価・応用に関わってきた研究者・エンジニアは、GMSの技術的本質を素早く理解し発展させられる。材料メーカー(昭和電工・デンカ等)や研究機関での経験が活かせる。
タイプ3. 素材メーカー・化学メーカーから新しいステージを求める人
大手素材メーカー・化学メーカーでの製造技術・品質管理・スケールアップ経験を持ち、「既存の製品を量産するだけでなく、世界初の材料を量産する経験をしたい」という志向の人材には、3DCは理想的な環境だ。量産化の壁を突破する経験は、材料エンジニアとしてのキャリアにとって大きな価値を持つ。
タイプ4. グローバルな自動車・電池市場に関わりたい人
ZER01NE Ventures(現代自動車グループCVC)の出資が示す通り、3DCはグローバルなEV電池サプライチェーンへの参入を目指している。英語での技術コミュニケーション・海外企業との折衝を経験したい人材、EV・蓄電デバイスという未来産業の最前線に立ちたい人には、成長の機会が多い環境だ。
タイプ5. 「技術でサステナビリティを実現する」に本気でコミットする人
「炭素で真にサステナブルな社会を実現する」というミッションを自分ごととして捉えられる人は、3DCのカルチャーフィットを生みやすい。ESG・クリーンエネルギーという大きな文脈の中で自分の専門性を活かしたい人材には、意義とやりがいを同時に得られる職場だ。
株式会社3DCに向いていない人
批判ではなくミスマッチ防止のため、正直に整理する。
- タイプ:電池・材料の専門知識がない人 — 事業開発・管理職種は一定の柔軟性があるが、技術職では材料科学・電気化学の基礎知識がない状態での入社は困難
- タイプ:量産フェーズの実業的な課題よりも基礎研究を重視したい人 — 現在の3DCは量産化・品質保証・顧客開拓が最重要課題であり、自由な基礎研究よりも産業応用への貢献が求められる
- タイプ:単一拠点勤務を絶対条件にしている人 — 仙台・川崎・岐阜の三拠点体制のため、拠点間の移動や出張が業務に含まれる場合がある
- タイプ:安定した収入と福利厚生を最優先にする人 — スタートアップ段階であることを前提にした判断が必要であり、給与・制度面での大企業比較は難しい
- タイプ:短期間でのキャリアチェンジを予定している人 — 量産化という長いタイムラインで成果が出る仕事の性質上、短期での離脱は3DCにとっても本人にとっても不幸なミスマッチになりやすい
株式会社3DCの選考対策
戦略1. GMS技術の論文・プレスリリースを読み込む
西原洋知教授がAIMRで発表した学術論文(GMSに関する初期論文)とPR TIMESのプレスリリース(調達発表・CES出展等)を事前に読み込むことが第一歩だ。「GMSの競合材料(カーボンブラック・CNT等)との差別化ポイント」「量産化の技術的課題」「シリコン負極への応用の意義」について自分なりに整理しておくことで、技術面接での深い対話ができる。
戦略2. 自分の専門性とGMSの課題の接点を具体的に語る
「電池が好き」「グラフェンに興味がある」という動機より、「自分がこれまで取り組んできた〇〇という技術課題が、GMSの〇〇という特性で解決できると考えた」という具体的な接点の語りが評価される。面接では自分のバックグラウンドとGMSをどう結びつけるかが最重要だ。
戦略3. 量産化フェーズへのコミットメントを示す
「研究段階より量産化フェーズに入ってからの方が興味がある」「スケールアップの課題を技術的に解決したい」というスタンスは、現在の3DCのステージと正確に合致する。選考では「なぜ量産化フェーズのスタートアップを選ぶのか」という問いへの準備が必要だ。
戦略4. EV・電池市場の動向を最新情報まで把握する
ZER01NE Ventures(現代自動車)・東邦アセチレン(量産連携)・東亞合成(素材メーカー)という株主構成から、3DCが目指す市場の文脈を理解することが重要だ。EV市場の動向・主要電池メーカー(CATL・パナソニック・Samsung SDI等)の技術ロードマップ・シリコン負極の市場化状況について最新情報を把握しておくと、「市場を見ているエンジニア」として評価される。
戦略5. 長期的な動機と具体的な貢献イメージを伝える
3DCは約30名の組織であり、採用一人一人がチームのケイパビリティに直接影響する。「このポジションで何を実現したいか」「3〜5年後に3DCでどんな仕事をしていたいか」という長期的な貢献イメージを具体的に描いておくことが選考を通過する鍵だ。
戦略6. 英語でのコミュニケーション能力を準備する
CES出展・ZER01NE Ventures(韓国系)との連携など、グローバルなコミュニケーションが必要な場面が増えている。技術英語(論文・データシートの読み書き・プレゼン)のスキルを事前に整理し、面接で示せる準備をしておきたい。
株式会社3DCへの転職で評価されやすい経験
- リチウムイオン電池・全固体電池・燃料電池の電極材料・電解質に関する研究・開発経験
- 炭素系機能材料(グラフェン・CNT・カーボンブラック・活性炭)の合成・評価・応用経験
- 電気化学測定(サイクリックボルタンメトリー・インピーダンス分光法等)の実務経験
- 導電助剤・バインダー・活物質等の電極スラリー設計・塗工プロセス経験
- シリコン負極・リチウム合金負極材料の研究・開発経験
- 電池の充放電評価・寿命試験・安全性評価の実務経験
- 材料のスケールアップ・量産プロセス設計・製造条件の最適化経験
- 品質管理(QC・QA)・製造工程管理(SPC・FMEA等)の実務経験
- 電池メーカー・電極材料メーカー・炭素材料メーカーでの開発・製造経験
- 大学・研究機関での電気化学・材料科学・化学工学分野の博士研究経験
- 顧客の電池メーカーへの技術営業・アプリケーション開発支援の経験
- 熱処理プロセス(焼成・CVD等)の設計・管理経験
- 英語での技術コミュニケーション(論文執筆・学会発表・海外顧客対応)の実績
- プロダクトマネジメント(B2B技術製品の上市・顧客開拓)の経験
特に評価されやすいのは、電池メーカー・電極材料メーカーでの導電助剤・シリコン負極に関する材料開発の実務経験と、炭素系材料のスケールアップ・量産化プロセスに携わった製造技術経験だ。この二つが重なる人材は3DCが最も強く採用したいターゲットであり、選考でも積極的に評価される。
まとめ
株式会社3DCは、東北大学AIMRという世界最高峰の材料研究を核に、「炭素材料で真にサステナブルな社会を実現する」という野心的なミッションを実業として追うディープテック・スタートアップだ。2022年設立から2026年3月時点で累計56億円超という大型の資金を調達し、量産品の出荷開始・CES出展・現代自動車グループCVCからの出資と、グローバルな電池材料市場への参入を着実に進めている。
技術的には、Graphene MesoSponge®(GMS)という世界初の精密制御グラフェン材料によって、次世代リチウムイオン電池・シリコン負極・全固体電池という市場規模の大きなセグメントに対し、差別化された材料ソリューションを提供できる。これは単なる「グラフェンブーム」に乗った企業ではなく、東北大学の30年の蓄積に基づく本物の技術優位だ。
転職先として3DCを検討する際には、「量産化フェーズへの移行期にあるスタートアップ」というステージを正確に理解することが重要だ。基礎研究の自由さより産業実装の確実さ、安定した環境より成長の機会、という価値観でキャリアを選ぶ人材にとって、日本国内でも屈指のやりがいと可能性を持つ職場になるだろう。電池材料・炭素材料に関わる専門家は、まず公式サイトと求人情報を確認し、自分の専門性がGMSの課題のどこに貢献できるかを考えてみてほしい。
参考情報
- 公式サイト: https://www.3dc.co.jp/
- 東北大学スタートアップ インタビュー: https://startup.tohoku.ac.jp/achievement/interview-3dc/
- シリーズA 2ndクローズ 公式リリース: https://www.3dc.co.jp/en/news/3dc-completes-series-a-second-closing-securing-strategic-and-financial-investors-to-accelerate-mass-production-and-business-expansion
- Forbes Japan選出 PR TIMES: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000098727.html
- NEDO企業ページ: https://www.nedo.go.jp/activities/startups/company_00032.html
