1. リード文
「Webサイト管理担当」という職種名を求人票で目にしたとき、「何となく地味そう」「技術職ではないけど何をする人?」と感じた方は少なくないでしょう。
しかし、20年以上この業界で転職支援に関わってきた経験からいうと、この職種は企業のデジタル接点のほぼすべてを担う、実はかなり幅広い仕事です。自社サイトの更新・保守から、SEO対策、Webアクセス解析、外部制作会社のディレクション、CMS管理まで——一人で複数の専門領域にまたがって動くことが求められます。
転職市場における需要は根強く、事業会社のインハウスポジションを中心に2026年現在も求人数は高水準を維持しています。ただし、同じ「Webサイト管理担当」という職種名でも、会社規模や業種によって仕事の中身が大きく変わるため、求人票の解読力と自分の強みの言語化が転職成功のカギになります。
この記事では、職種の全体像から年収・キャリアパス・転職市場の実態まで、採用側・候補者側の両面を知る立場から正直にお伝えします。
2. 職務の概要
Webサイト管理担当(Web担当者とも呼ばれる)は、企業が運営するWebサイト——コーポレートサイト、採用サイト、サービスサイト、ECサイトなど——の日常的な運営・管理・改善を担う職種です。
制作会社(受託)に所属するWebディレクターとは異なり、特定の企業に所属して自社サイトのみを継続的に管理する「インハウス」型が一般的です。外部委託していたWeb業務を内製化したい企業、もしくは既存の担当者に後任を育てたい企業が採用するケースが多く見られます。
所属部門はマーケティング部・広報部・経営企画部・デジタル推進室など会社によって様々ですが、部門を超えた横断的な関わりが求められることがほとんどです。
3. 仕事内容
求人票に記載される業務内容を整理すると、以下の6つのカテゴリに分類できます。
3-1. サイトコンテンツの更新・管理
最も基本的な業務です。新商品・サービスの掲載、ニュースリリースの更新、採用情報の掲載・修正など、Webサイト上のテキスト・画像・ファイルを随時更新します。WordPressをはじめとするCMSを使って作業することが多く、HTML/CSSの基礎知識があれば細かいレイアウト調整も担当します。
3-2. アクセス解析と改善提案
Google AnalyticsやSearch Consoleなどのツールを活用して、サイトへの流入数・離脱率・コンバージョン率などを定期的に分析します。「なぜアクセスが落ちているか」「どのページが問題か」を特定し、改善施策を立案・実行します。データをもとに改善提案ができる人材は市場価値が高く、採用担当者も注目するポイントです。
3-3. SEO対策
検索エンジン経由の流入を増やすため、キーワード選定・メタ情報の最適化・内部リンク整備・コンテンツ制作の方向付けなどを行います。社内のコンテンツマーケティング施策と連動することも多く、ライターや営業・商品担当者と連携して記事コンテンツを企画するケースも増えています。
3-4. 制作ディレクション・外注管理
ページリニューアルや新規LP(ランディングページ)制作など、外部の制作会社やフリーランサーに発注する案件が発生した場合、要件定義・スケジュール管理・品質チェック・検収までをWeb担当者が仕切ります。予算管理もセットで担うことが多く、プロジェクトマネジメント能力が必要です。
3-5. ドメイン・サーバー・ツール管理
ドメインの更新手続き・SSL証明書の管理・サーバーの契約・CMSのアップデート・各種マーケティングツールのアカウント管理など、インフラに近い管理業務も担当します。IT部門が別にある場合は連携で対応しますが、小規模企業ではWeb担当者が一手に引き受けるケースも珍しくありません。
3-6. 社内調整・ステークホルダー対応
各部門から「この情報をサイトに掲載したい」「このページを直してほしい」といった依頼が日常的に舞い込みます。優先度を判断しながら調整し、経営層・営業・広報・人事・エンジニアなど様々な部署と連携して進めます。社内全方位のコミュニケーション力が求められるため、「技術が少し分かる社内コミュニケーター」の側面も強い職種です。
4. 必要スキル
Webサイト管理担当に求められるスキルは、技術系とビジネス系に分けて考えるとわかりやすいです。
技術系スキル
| スキル | 重要度 | 補足 |
|---|---|---|
| HTML / CSS の基礎 | 必須 | コーディング不要な場合でも読み書きできると強い |
| CMS操作(WordPress等) | 必須 | 多くの企業がWordPressを採用 |
| Google Analytics / GA4 | 必須 | アクセス解析の標準ツール |
| Google Search Console | 必須 | SEO管理・インデックス確認 |
| 画像編集(Photoshop / Canva等) | あると良い | バナー・OGP画像の調整など |
| JavaScript の基礎 | あると良い | GTMタグ管理などで役立つ |
| Google Tag Manager | あると良い | 計測タグの管理で頻出 |
| サーバー・ドメイン管理の基礎 | 会社次第 | 小規模企業は必須に近い |
ビジネス系スキル
- SEO・コンテンツマーケティングの知識:検索流入を伸ばすための基本的な考え方
- プロジェクト管理能力:複数案件の優先度調整、スケジュール進行
- ライティング・編集力:更新コンテンツの品質管理、ページ原稿の校閲
- コミュニケーション力:多部門調整、外注先への的確な指示
- 数値への抵抗のなさ:レポーティング・KPI管理など、定量思考が必要
5. 年収帯
転職市場における求人票のデータをもとに整理すると、以下の水準が一般的です。
| 経験・条件 | 想定年収レンジ |
|---|---|
| 未経験・第二新卒 | 280万〜350万円 |
| 実務経験1〜2年 | 330万〜420万円 |
| 実務経験3〜5年(スペシャリスト) | 420万〜550万円 |
| リーダー・マネジャークラス | 500万〜700万円 |
| 大企業・外資・EC系上位ポジション | 600万〜900万円超 |
エージェント視点からの補足:
Webサイト管理担当の年収は、担当する業務範囲と「数字で成果を語れるか」で大きく変わります。「サイトを更新していた」だけでは年収が上がりにくく、「施策Aの実施でCVRが〇%改善した」「自然検索流入を半年で〇%増加させた」など、成果をKPIで語れる人が評価されます。
また、EC(電子商取引)系の企業は売上直結のWebサイト運営に熱心で、一般的なコーポレートサイト管理より年収レンジが高い傾向があります。
6. 向いている人
20年以上の現場経験から見ると、Webサイト管理担当として長続きし、評価される人には共通した特徴があります。
1. 「直したい・改善したい」という感覚が自然に湧く人 サイトを見て「このボタン分かりにくいな」「この文章伝わりにくいな」と反射的に気になる人は向いています。この感覚が改善の起点になります。
2. 地道な作業を淡々とこなせる人 コンテンツ更新・メタ情報の整備・404エラーチェックなど、地味だが必要な作業が多い職種です。「一発逆転の大きな施策」より「毎週の小さな改善の積み重ね」で成果が出る仕事です。
3. 多部門とコミュニケーションを取るのが苦にならない人 営業・広報・人事・エンジニアと日常的に連携します。技術的な話を非技術者に分かりやすく説明できる人、逆に非技術者からの要望を実現可能な仕様に落とし込める人は重宝されます。
4. データを見て仮説を立てるのが好きな人 アクセス解析のダッシュボードを眺めて「なぜここで離脱しているのか」「どの流入経路が伸びているのか」を考えることを楽しめる人は強みを発揮できます。
5. 新しいツール・トレンドに自分で追いつける人 WebのトレンドはSEOアルゴリズム変更・CMSのアップデート・新しい計測ツールの登場など変化が早い。公式ドキュメントを読んだり、業界ブログを定期チェックしたりする習慣がある人は周囲と差が付きます。
7. キャリアパス
Webサイト管理担当は「特定の専門性に閉じた職種」ではなく、様々な方向へのキャリア展開が可能です。
パターン1:Webマーケターへ
SEO・コンテンツ・Web広告・SNS運用などを含む広義のWebマーケティング担当へステップアップするルートです。アクセス解析や施策立案の経験を積むほど移行しやすくなります。事業会社のインハウスマーケターは需要が高く、年収400万〜700万円の求人が中心です。
パターン2:Webディレクターへ
制作ディレクションや外注管理の経験を積み、Webディレクターとして独立するルートです。制作会社への転職、またはフリーランスとしての独立につながるケースも多いです。平均年収は正社員で517万円前後、フリーランス案件では月60万〜80万円の案件も存在します。
パターン3:デジタルマーケティングマネジャーへ
チームを持つリーダー・マネジャーポジションへの昇進です。会社内でWebを含むデジタル全般の責任者となるルートで、年収500万〜700万円超を狙えます。
パターン4:社内DX推進・デジタル戦略へ
Webサイト管理で培ったデジタルリテラシーとステークホルダー調整力を活かし、社内のDX推進担当や経営企画のデジタル戦略担当へ異動・転職するルートも増えています。企業のデジタル化ニーズが高まる中、この移行パターンは今後さらに増えると見ています。
パターン5:特定専門領域に特化
SEO専門家・UIUXデザイナー・CRO(コンバージョン最適化)スペシャリストなど、特定領域に深く特化するルートです。専門性が明確になると転職市場での価値が上がり、高年収ポジションへの道が開けます。
8. 転職市場の実態
求人の特徴
2026年現在、Webサイト管理担当の求人はIndeed・doda・マイナビ・エン転職などの主要求人媒体に常時多数掲載されています。特に以下の業種・企業タイプで採用が活発です。
- 事業会社(メーカー・サービス業・BtoB企業):自社サイトのインハウス運用強化
- EC事業者:売上直結のサイト運営担当として需要大
- スタートアップ・ベンチャー:少人数でWeb全般を回せるオールラウンダー採用
- 人材・不動産・金融・医療系:顧客との接点であるWebサイトの重要性が高まっている業種
未経験・第二新卒の採用状況
職種未経験でも採用する求人は一定数存在します。「HTMLの基礎知識がある」「個人ブログ・サイト運営経験がある」「WordPressを触ったことがある」といったエピソードがあると選考上有利になりやすいです。
ただし、未経験採用の多くは「教育してもらえる代わりに年収は抑えめ」のポジションです。最初の1〜2年で成果を出してから転職でレンジを上げる、というステップを最初から設計しておくことをお勧めします。
経験者転職の傾向
実務3年以上かつアクセス解析・SEOの成果実績がある候補者は、エージェント経由でも複数社から引き合いが来るレベルで需要があります。特に「GA4への移行対応経験がある」「Core Web Vitalsの改善経験がある」「CMSのカスタマイズ・構築経験がある」といったスキルは、2025〜2026年の転職市場で引き合いが強い条件です。
エージェント目線の注意点
求人票に「未経験歓迎」「何でも挑戦できる環境」と書いてある企業の中には、Web担当が一人もしくは前任者が突然辞めた穴埋め採用というケースも少なくありません。
面接では以下を必ず確認することをお勧めします。
- 現在のWeb担当の体制(人数・役割分担)
- Webサイトのリニューアル頻度・予算規模
- 改善施策の意思決定プロセス(承認者・スピード感)
- KPIの設定・評価基準
これらを事前に聞けるかどうかが、入社後のミスマッチを防ぐ最大のポイントです。
9. まとめ
Webサイト管理担当は、「地味な更新作業をする人」ではなく、企業のデジタル接点を守り育て、マーケティング・技術・制作をつなぐ要の職種です。
アクセス解析・SEO・CMS管理・外注ディレクションを一人でこなす幅の広さゆえに、「何でも屋」になりやすいというリスクもありますが、逆にいえばどの方向にもキャリアを広げやすい職種でもあります。
転職市場では需要が安定しており、実務経験3年以上かつ数字で成果を語れる人材は引き合いが強い状況です。「サイトの改善に成果責任を持って関わりたい」「デジタルの視点から事業に貢献したい」という方にとって、Webサイト管理担当は長くキャリアを積める選択肢になるでしょう。
10. 参照情報源
- Web担当者とは?仕事内容や向いている人の特徴、必要なスキル、将来性を解説 - デジタルハリウッド
- Web業界の年収ガイド|平均年収・年代別・役職別・成功事例を解説 - JAC Recruitment
- Webディレクターの年収ガイド|平均年収・年代別・役職別・成功事例を解説 - JAC Recruitment
- サイト運営とは?仕事内容・年収について - マイナビ転職ITエージェント
- インハウスデザイナーとは?仕事内容や必要な資格、なり方を解説 - レバテッククリエイター
- Web業界の転職事情|年収相場や求められるスキル・経験を解説 - JAC Recruitment
- Webマーケターになるには~Webディレクターのキャリアプラン~ - ウェブスタッフ
- 企業のWeb担当者が実践したい20の業務 - ウェブマネジメント・アカデミー