転職エージェントの正体は、アフィリエイトビジネスだ。

これを知っているかどうかで、転職活動の質が根本から変わる。

「キャリアに向き合います」の構造的なウソ

転職エージェントの収益モデルはシンプルだ。求職者が企業に入社したとき、その企業から紹介手数料が支払われる。相場は年収の30〜35%。年収500万円なら1件あたり150〜175万円の売上になる。

この構造が何を生み出すか。応募数と内定数を増やすことが、担当者の正義になる。

1人のキャリアにじっくり時間をかけるより、10人に同じ求人を送った方がビジネス上の効率はいい。担当者だって人間だ。売上目標がある。目標を達成するために合理的に動けば、自然と「数を打つ」方向に行く。

これはエージェントが悪人だということじゃない。ビジネスモデルがそうなっているということだ。構造が行動を決める。

「キャリアに向き合います」というキャッチコピーがある。大手エージェントがテレビCMやYouTube広告で繰り返し流している言葉だ。でも、この収益構造を知った上でその言葉を聞くと、受け取り方が変わるはずだ。

エージェントにとって本当のクライアントは誰か

ここが核心になる。

転職エージェントにお金を払っているのは「企業」だ。求職者は一円も払っていない。ビジネス上、誰のニーズを優先するかは自明だ。

多くのエージェントは「企業が何を求めているか」を軸にコミュニケーションを設計する。企業から「こういうスペックの人が欲しい」という依頼が来て、条件に合いそうな求職者に連絡を取る。求職者はその構造の中で「当てられる側」として動いている。

「あなたのキャリアに向き合います」と言いながら、実態として向き合っているのは企業の採用ニーズだ。このズレに無自覚なまま転職活動をすると、自分の人生のハンドルをエージェントに渡す形になる。

「良い人・良い会社」の定義が恐ろしく浅い

企業の人事担当に「どんな人が欲しいですか?」と聞いてみると、返ってくる言葉は大体こうだ。

「いい人が欲しい。」

じゃあ、いい人って何ですか?と聞き返すと——

「いい学校を出て、いい会社にいる人。」

ほぼ毎回この答えに着地する。求職者側も同じで、「いい会社に入りたい」という。いい会社って?と聞くと「上場していて安定している会社」という。

この「良い」の定義の浅さが、転職市場で大量の機会損失を生み出している。

学歴や前職の社名というラベルだけで人を評価する。その人が何を考え、何ができ、どう成長するかは関係ない。エージェントも、そのラベルに合わせて求職者をフィルタリングしてくる。

実際、こんな話がある。特定のエージェント経由で来た書類というだけで、中身を読まずに落とす企業の人事担当がいる。職務経歴書の内容じゃなく、送ってきたエージェントの名前で判断している。あるいは、高校の偏差値まで調べて選考基準にしている企業もある。

落とす理由を探している、と言った方が正確だ。こういう選考が今も普通に行われている。

エージェント業界の知られていない構造

もう一つ、知っておいた方がいいルールがある。

転職エージェント業界には、最初に求職者を紹介したエージェントに売上が計上されるというルールが存在する。不動産の囲い込みと同じ構造だ。

たとえばあなたがA社エージェントに登録し、後からB社にも登録したとする。A社に先に紹介されていた企業にB社経由で応募して内定が出た場合、売上はA社につくことがある。こうなるとB社には内定を出す動機が薄れる。

結果として、求職者が知らないうちに機会損失を被るケースが発生する。複数エージェントを並行利用するときに、この構造を理解していないと損をする。

さらに、プラットフォーム型のエージェントには別の問題もある。求職者が「興味あり」ボタンを押しただけで、知らないうちに企業への書類提出とみなされるケースだ。自分が応募したつもりのない会社に書類が渡っていた、という話は珍しくない。

エージェントとの正しい付き合い方

エージェントを否定したいわけじゃない。使い方次第で転職活動の質は上がる。ただ、主導権は自分が持ち続けることが大前提だ。

エージェントから求人を提案されたとき、必ず聞いてほしいことがある。

「なぜ私にこれを提案するんですか?」

この一言で、担当者がちゃんとあなたのキャリアを理解しているかどうかがわかる。「スキルがマッチしているから」という表面的な答えしか返ってこないなら、そのエージェントはラベルでマッチングしているだけかもしれない。

転職はゴールじゃない。その先に3年・5年・10年の人生が続く。エージェントは転職を成立させれば売上になる。でもあなたが気にしているのは、転職後にどう生きるかだ。この利害のズレを忘れないことが、転職活動で一番大事なことだと思っている。

まず知ることが、すべての起点になる

このメディア「キホンノキ」は、転職活動を始める前に「まず企業を知り、仕事を知る」ことを目的に作っている。

エージェントに言われるがまま動く前に、自分で企業の実態を調べてほしい。求人票には書かれていない働き方のリアル、業界の構造、会社の本当の強みと弱み——そこを知った上でエージェントを使うのと、何も知らずに使うのでは、結果が全然違う。

「キャリアに向き合います」という言葉を信じるより先に、自分がキャリアに向き合う。

エージェントはツールだ。ツールに使われるのではなく、ツールを使う側でいてほしい。