CDO(デザイン担当)とは?
CDO(Chief Design Officer / 最高デザイン責任者)は、企業のデザイン戦略全体を統括する経営幹部ポジションです。UI・UX・ブランドデザインから、デザイン組織の構築・育成、そして経営会議でのデザイン観点の提言まで、「デザインを武器に事業を成長させる」ことが最大の使命です。
日本でも、メルカリ・マネーフォワード・ビズリーチ・ラクスルといったデジタル企業を中心に、CDOポジションの設置が急速に広がっています。特許庁と経済産業省が2018年に公表した「デザイン経営宣言」以降、デザインを経営資源として捉える動きが企業全体に浸透し、デザイン責任者を経営チームに置く企業が増えています。
一方で、「CDO」という略称は3つの異なる役職を指すため、混同が生じやすい点に注意が必要です。本記事では「デザイン担当CDO」に絞って解説します。
CDOの3つの意味と混同問題
「CDO」は以下の3つの役職すべての略称として使われています。
| 略称 | 正式名称 | 主な役割 |
|---|---|---|
| CDO | Chief Design Officer(最高デザイン責任者) | デザイン戦略・UX・ブランド体験の統括 |
| CDO | Chief Digital Officer(最高デジタル責任者) | DX推進・デジタル変革の統括 |
| CDO | Chief Data Officer(最高データ責任者) | データ戦略・データガバナンスの統括 |
求人票を見る際は必ず「何のCDOか」を確認してください。IT系の求人サイトでは「CDO」単独の検索結果に三者が混在しています。本記事で扱うのは、デザインを軸とした Chief Design Officer です。
仕事内容
CDO(デザイン担当)の業務は、現場のデザイン制作ではなく「デザインを組織・経営に実装すること」に重心があります。実際の求人票や現役CDOの発信をもとに、代表的な業務を整理します。
1. デザイン戦略の立案・推進
企業のビジョン・ミッション・ユーザーニーズを踏まえ、中長期のデザイン戦略を策定します。「どのようなデザイン体験を提供するのか」という方針を言語化し、経営層・事業部門・開発チームへ浸透させます。
2. デザイン組織の構築・育成
デザイナーの採用計画・人員配置・評価制度の設計を担います。マネーフォワードのCDOが語るように「デザイン組織の強化」はCDOの中核ミッションであり、数十名〜100名規模のデザイン組織をマネジメントするケースもあります。
3. プロダクト・デザイン品質の監督
各プロダクトのUI/UX品質を横断的に管理し、デザインシステムの策定・運用を主導します。一貫したブランド体験を維持するために、複数プロダクトのデザインディレクションを担います。
4. 経営会議へのデザイン観点の提言
経営幹部として経営会議に参加し、製品開発・マーケティング・新規事業においてデザイン視点でのインプットを行います。経営方針をデザインに落とし込む「翻訳者」としての役割が重要です。
5. 他部署との連携・コラボレーション
エンジニア・プロダクトマネージャー・マーケター・経営企画など、デザイン以外の職種と密に連携します。「曖昧なビジョンをデザインという共通言語で可視化する」スキルが問われます。
6. デザイン文化の醸成
組織全体にデザイン思考を浸透させるためのワークショップ設計、社内勉強会の主催、デザインガイドラインの整備なども行います。
必要なスキル・要件
実際の求人票(ネクストビート、フロッグ、マネーフォワード、クライス&カンパニー掲載案件など)に記載された要件をもとに整理します。
必須スキル
デザイン実務経験(5年以上が目安) UI/UX・インタラクションデザイン・ビジュアルデザインいずれかの分野で一定水準以上の実務経験が求められます。ツールはFigma・Sketch・Adobe XDなどが挙げられます。
マネジメント経験 デザイナーチームのリード経験、または組織立ち上げ経験。「デザイン組織を0から作れるマネジメント志向」を明示する求人も多い。
ビジネス・事業理解 KPI・事業目標・収益構造の理解が必要です。定量的なファクトに基づいて仮説を立て、課題を解決してきた経験が評価されます。
ステークホルダーコミュニケーション 経営層・事業部門・エンジニアとの折衝・合意形成能力。経営層と同じ目線で会話できることが要件として明示されるケースが多い。
歓迎スキル
- デザインシステムの構築・運用経験
- プロダクトマネジメント経験(PM兼任経験者は特に評価が高い)
- 採用・人事制度設計の経験
- ブランド戦略・コミュニケーションデザインの知見
- 英語力(グローバル展開企業の場合)
注意点:CDO自体の経験は必須ではない
求人票の多くは「CDO経験がなくても、経営層と同じ目線でビジョン実現に向き合える方」を明示しています。デザインマネージャーやデザイン部長として実績を積んだうえで、事業成長への強い意欲があれば選考対象になるケースは多いです。
年収帯(企業規模別)
CDOの年収は企業規模・業界・ステージによって大きく異なります。以下は、JACリクルートメント・クライス&カンパニー・各求人サイトのデータをもとにした目安です。
| 企業規模・ステージ | 年収目安 | 備考 |
|---|---|---|
| アーリースタートアップ(シリーズA前後) | 600万〜900万円 | ストックオプション込みで検討されることが多い |
| 中堅スタートアップ(シリーズB〜C) | 800万〜1,500万円 | 「CDO候補」ポジションが多い |
| 上場IT企業 | 1,200万〜2,500万円 | マネーフォワードなどが該当 |
| 大手事業会社・製造業 | 2,000万〜5,000万円以上 | ソニー・大手メーカーなどCDO職は経営役員扱い |
補足:具体的な求人例
- ネクストビート(CDO候補):予定年収600万〜750万円(Green掲載)
- マネーフォワード(CDO/VPoD):デザイン組織の中核ポジション、年収は経験考慮
- クライス&カンパニー掲載のCDO案件:1,000万〜1,500万円台
- JACリクルートメントのエグゼクティブデータ:ボリュームゾーンは1,400万〜2,000万円、上限は4,000万〜5,000万円
「1,000万円」という年収はCDOとして特別高い水準ではなく、大手企業のCDO職では3,000万円を超えるケースも珍しくありません。
向いている人
1. デザインを「事業の武器」として語れる人
「きれいなデザインを作りたい」ではなく、「デザインでユーザー体験を改善し、事業成長に貢献したい」という意識を持っている人が向いています。KPI・売上・リテンションなどの事業指標と結びつけてデザインを語れることが重要です。
2. 曖昧さを言語化・構造化できる人
「なんとなくダサい」「ユーザーが使いにくそう」という感覚的な問題を、組織全体が理解できる言葉と構造に変換する能力が求められます。これは経営層へのプレゼンでも、現場デザイナーへの指示でも不可欠なスキルです。
3. 多様なステークホルダーと対等に渡り合える人
CTO・CFO・CMOと並んでCXOとして議論できる胆力と論理性が必要です。デザイナーとしての専門性を保ちながら、「デザイン以外の言語」でも話せる人が向いています。
4. 組織を育てることに喜びを感じられる人
自分でデザインするより「チームが良いデザインを生み出せる環境を作ること」に達成感を感じられる人です。採用・評価・育成が業務の大きな割合を占めるため、マネジメントそのものへの興味が不可欠です。
5. 変化の速い環境を楽しめる人
デジタルプロダクトのデザイントレンドは速く変化します。新しいデザインツール・AIツール・フレームワークへの適応意欲と、組織を継続的にアップデートし続けるエネルギーが求められます。
キャリアパス
CDOになるための王道ルートは存在しませんが、実際の転職事例や求人要件をもとにすると、以下の4つのルートが多く見られます。
ルート1:デザイン職からの昇進型
UIデザイナー / UXデザイナー
→ シニアデザイナー / リードデザイナー
→ デザインマネージャー / デザイン部長
→ CDO
最も一般的なルートです。CDOの約39%が内部昇進でポジションを得ているというデータもあります(OPSIZM調べ)。
ルート2:デザインコンサル・エージェンシー出身型
デザイン会社やコンサルティングファームでクライアントのデザイン戦略支援を経験後、事業会社のCDOに転身するパターン。クライス&カンパニー掲載案件には「外資コンサル→スタートアップCDO」の事例も。
ルート3:プロダクトマネジメント×デザイン兼任型
PMとデザイナーを兼任・兼務した経験から、プロダクト責任者として事業とデザインを横断する実績を積み、CDOに就くパターン。メルカリのCXO経歴者にもこのルートが見られます。
ルート4:スタートアップ創業・デザイン責任者経験型
自分でデザインスタジオを起業、またはスタートアップの創業期からデザイン全体を見てきた経験を持つ人が事業会社のCDOになるケース。マネーフォワードCDO(セルジオ伊藤氏)がこのタイプに近い。
CDO以降のキャリア
- CXO(Chief Experience Officer)へ:デザイン領域を超えてカスタマー体験全体を統括するポジションへ
- CEO・共同創業者へ:デザイン思考を持つ起業家として独立・創業
- 独立コンサルタント・顧問:複数企業にデザイン戦略アドバイザーとして関与
採用市場・転職動向
求人数は増加傾向
ビズリーチのCDO関連求人(2026年6月時点)では451件以上の求人が掲載されており、「CDO候補」ポジションも含めると1,000件を超える。ReDesigner(グッドパッチ運営)でも「CDO・CXO・CCO候補」のカテゴリが存在し、複数社が積極採用中です。
「CDO候補」という採用スタイルが主流
完全なCDO経験者は希少なため、多くの企業は「CDO候補」「将来的にCDOを目指せるポジション」として採用し、社内で育成するアプローチをとっています。ネクストビート・フロッグ・マネーフォワード(デザインマネージャー職)などがこのスタイルです。
求められる背景:デザイン経営の浸透
経済産業省・特許庁が2018年に「デザイン経営宣言」を発表して以降、製造業・金融・小売業など非IT企業でもデザイン責任者の設置が増加しています。ソニー・パナソニックなどの大手製造業でも、CDOポジションが経営幹部として位置づけられています。
注意点:ポジションの多様性と不明確さ
「CDO」の定義は企業によってまちまちで、実質的には「デザインマネージャー」相当のポジションを「CDO候補」と表記するケースも多い。年収・権限・組織規模の実態を面接で確認することが必須です。また「CXO(Chief Experience Officer)」「CCO(Chief Creative Officer)」など類似肩書きとの境界も曖昧なため、JDの内容を重視して判断することが大切です。
まとめ
CDO(Chief Design Officer / 最高デザイン責任者)は、デザインを経営の武器として使いこなすエグゼクティブポジションです。現場のデザイン制作よりも、戦略・組織・マネジメントに重心がある役職で、求められる人材はデザイナーと経営者の両方の資質を持つ人物です。
良い点としては、年収ポテンシャルが高く(1,000万〜5,000万円超)、経営に直結する意思決定に関与できること、デザインの社会的地位向上にも貢献できることが挙げられます。
注意点としては、「CDO」という肩書きと実態(権限・組織規模・年収)にギャップがある求人が混在していること、また「Chief Digital Officer」「Chief Data Officer」との混同も多いため、求人票の精査が必要です。
デザインマネージャーやシニアデザイナーとして実績を積んでいる方が、次のステップとして視野に入れるべきポジションです。求人サイトは「CDO候補」「デザイン責任者」「VPoD(VP of Design)」など複数の検索ワードで探すことをお勧めします。
参照情報源
- AXIS Insights:CDO(Chief Design Officer)の役割・導入企業・求められるスキル
- OPSIZM:CDO(Chief Design Officer)とは?なるには?役割・スキル・キャリアパス
- JACリクルートメント:CDOの転職事情|年収相場や求められるスキル経験を解説
- クライス&カンパニー:CDO(Chief Design Officer)求人情報
- 株式会社ネクストビート:CDO(Chief Design Officer)候補 求人
- 株式会社フロッグ:CDO(Chief Design Officer)候補 求人(engage)
- 株式会社クーリエ:CDO採用・求人情報
- マネーフォワード:CDO/VPoD 求人(Green)
- クロスデザイナー:CDO(最高デザイン責任者)とは?
- Goodpatch Blog:スタートアップにCDOが必要な理由
- ReDesigner:CDO・CXO・CCO候補のデザイナー募集
- Note(セルジオ / マネーフォワードCDO):CDOってどんな仕事?