栗林商船はどんな会社?
栗林商船株式会社は、1894年(明治27年)に創業した130年超の歴史を持つ内航海運企業です。東証スタンダード市場(証券コード:9171)に上場しており、本社は東京都千代田区大手町に置いています。
単体従業員は54名(2025年3月末)とコンパクトな持株会社スタイルを取りながら、グループ24社超・連結従業員1,107名のロジスティクス複合グループを形成しています。代表は栗林宏吉氏であり、同族経営の歴史を引き継ぎつつ上場会社としてのガバナンス体制を整えています。
事業の中核は、北海道と本州太平洋側を結ぶ**内航定期船(RORO船)**の運航です。王子製紙・日本製紙・日本製鋼所といった製紙・素材大手を主要荷主に持ち、100年超にわたる取引実績が参入障壁の高さを示しています。
企業概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式社名 | 栗林商船株式会社 |
| 証券コード | 9171(東証スタンダード市場) |
| 創業 | 1894年(明治27年) |
| 設立 | 1919年3月29日 |
| 本社所在地 | 東京都千代田区大手町2-2-1 新大手町ビル3F |
| 代表取締役社長 | 栗林宏吉 |
| 資本金 | 約12.15億円 |
| 従業員数(単体) | 54名(2025年3月末) |
| 従業員数(連結) | 1,107名(2025年3月末) |
| グループ会社数 | 24社超 |
| 売上高(2025年3月期) | 530億円 |
| 営業利益(2025年3月期) | 27.1億円 |
| 売上高(2026年3月期) | 538億円 |
| 営業利益(2026年3月期) | 20.8億円 |
| 主要荷主 | 王子製紙・日本製紙・日本製鋼所 等 |
主な事業内容
内航定期船(RORO船)
栗林商船の収益基盤であり、国内で初めてRORO船を建造・導入(1969年)したパイオニアとしての地位を持ちます。RORO船とは、トレーラー(荷台部分)をそのまま船に積み込める「ロールオン・ロールオフ」方式の貨物船です。
北海道(苫小牧港・釧路港)と本州太平洋側(仙台・東京・清水・名古屋・大阪)を結ぶ定期航路を運航しており、製紙原料(パルプ・紙製品)・重工業製品・一般雑貨を定期輸送しています。
内航不定期船
定期船では対応しない重量物・大型設備・大量貨物の一時的な輸送ニーズに応えるチャーター輸送事業です。工場設備の移設・建設資材の輸送など、臨時の大型輸送案件を全国で受注します。
陸上輸送(トレーラー輸送)
グループ内にトレーラー輸送会社を持ち、3,300台超のトレーラーを保有・運用しています。これは国内最大規模クラスであり、港から最終納品先まで一気通貫で担う「海陸一貫輸送」の実現を支えています。
港湾運送・倉庫
主要港(苫小牧・釧路・仙台・東京等)での荷役・保管・梱包サービスを提供します。定期船の寄港地に港湾機能を持つことで、顧客の物流コスト削減に貢献しています。
その他(ホテル・不動産・青果物卸売)
北海道・東北を中心にホテル運営・不動産賃貸事業も手がけます。また、道内産農産物の青果物卸売事業も展開しており、北海道経済との深いつながりを示しています。
栗林商船の強み
強み1:内航RORO船パイオニアの地位
1969年に国内で初めてRORO船を建造・導入した実績は、技術的な先行者利益と業界での高いブランド信頼をもたらしています。内航海運の中でも最も効率的な輸送形態として評価されるRORO方式において、先駆者としての圧倒的な経験値があります。
強み2:製紙大手との100年超の取引関係
王子製紙・日本製紙との取引は100年超にわたり、長期固定契約に近い安定した需要を確保しています。製紙産業の原料・製品輸送は代替困難な定期ニーズであり、競合他社が簡単に切り崩せないリレーションシップが強固な参入障壁となっています。
強み3:海陸一貫輸送ネットワーク
RORO船の航路とトレーラー3,300台超の陸上輸送を組み合わせることで、顧客は複数の物流会社と契約する必要がなくなります。「港から工場まで一社完結」という利便性は、大手荷主の物流一元化ニーズと完全に合致しています。
強み4:2024年問題によるモーダルシフト追い風
トラックドライバー不足(物流の2024年問題)が深刻化する中、船舶輸送への切り替え(モーダルシフト)を検討する荷主が増えています。内航海運・RORO船はこのモーダルシフト需要の最大の受け皿であり、栗林商船はその恩恵を直接受ける立場にあります。
強み5:北海道〜本州航路の希少性
北海道と本州太平洋側を結ぶ内航定期船ネットワークは地理的に代替困難です。競合他社が同等のネットワークを短期間で構築するためには膨大な設備投資と実績構築が必要であり、参入障壁の高さが安定収益の源泉となっています。
強み6:130年超の事業継続性と財務安定性
創業130年超の歴史を持つ企業としての信頼性は、顧客・金融機関・港湾インフラとの関係において大きな優位性を発揮します。また、長期安定的な業績と健全な財務体質(退職金制度・社宅制度など従業員向け制度の充実)は人材定着にも貢献しています。
栗林商船の年収事情
平均年収
有価証券報告書(2023年3月期)ベースでは単体平均年収708万円(平均年齢43.2歳、平均勤続13年)です。ただし、この数字は持株会社機能を担う本社単体54名(管理・営業職が中心)の数値であり、グループ全体(船員・現場職・港湾作業員含む1,107名)の平均とは異なることに注意が必要です。
キャリア採用の年収目安は公式採用ページで400〜950万円と示されており、経験・職種・役職によって大きく幅があります。
職種別年収目安
| 職種 | 年収目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 総合職(本社・管理営業) | 550〜900万円 | 有報単体ベース |
| 一般職・事務職 | 380〜520万円 | グループ企業含む |
| 船員(航海士・機関士) | 500〜800万円 | 船舶技術資格による差が大きい |
| 港湾・陸上作業職 | 380〜550万円 | グループ子会社勤務 |
| ドライバー・トレーラー職 | 380〜530万円 | グループ輸送子会社 |
| 管理職・マネージャー | 700〜950万円 | 実績・年次による |
※新卒総合職の初任給:月22.05万円(2025年度)
栗林商船の働き方・福利厚生
栗林商船は年間休日130日・有給取得率85.8%と、製造・物流業界の中では比較的ホワイトな働き方環境を実現しています。
| 制度・項目 | 内容 |
|---|---|
| 年間休日 | 130日(完全週休2日・祝祭日・年末年始・夏季7日) |
| 有給休暇 | 年10〜20日(取得率85.8%、平均13日取得) |
| 月平均残業 | 18〜23.9時間(部署差あり) |
| 社宅制度 | あり(40歳以下の社員対象) |
| 住宅手当 | あり(持家所有者向け) |
| 退職金制度 | あり |
| 財形貯蓄 | あり |
| 持株会制度 | あり |
| 社内預金制度 | あり |
| 賞与 | 年2回(7月・12月)+業績連動期末賞与 |
| 健康保険 | 業界健康保険組合 |
| 交通費 | 全額支給 |
社宅(40歳以下)・退職金・持株会・財形貯蓄・社内預金と、老舗大手らしい安定志向の福利厚生体系が整っています。中途入社でも正社員として同等の制度を享受できる点が評価されています。
栗林商船の社風・カルチャー
安定重視・長期志向の文化
創業130年超の歴史に裏打ちされた「長期的な信頼関係」を最重視する社風です。荷主との取引・社員の育成・インフラ投資いずれも、短期利益より長期安定を優先する意思決定が多いと伝えられています。
同族経営の影響
栗林家による同族経営の色彩が残る組織であり、意思決定はトップダウン傾向が強いとの評価があります。一方でその安定したリーダーシップが130年間の事業継続を支えてきたという評価もあります。
現場・船員へのリスペクト文化
海運業の本質が「船と船員」にあるという認識が社内に根付いており、現場職・技術職を軽視しない文化があります。本社管理職も港湾・船舶の現場理解を深めることが期待されています。
地方・北海道との深いつながり
ホテル・青果物・不動産事業を通じて北海道経済に深く根ざした企業文化を持ちます。転勤で北海道・東北・東京の各拠点を経験することが一般的です。
栗林商船の転職難易度
難易度:4級(やや高め)
本社総合職への転職は物流・海運・商社など関連業界での経験が重視され、異業種からのジャンプアップは難易度が高めです。一方でグループ企業のドライバー・港湾スタッフなどは業務経験があれば比較的応募しやすい体制となっています。
| 職種 | 難易度 | 備考 |
|---|---|---|
| 本社総合職(営業・企画) | ★★★★☆ | 物流・海運業界経験優遇 |
| 船員(航海士・機関士) | ★★★★★ | 海技資格(1〜3級)必須 |
| 財務・経理職 | ★★★★☆ | 上場企業経理経験優遇 |
| 港湾・陸上作業職 | ★★★☆☆ | フォークリフト資格等歓迎 |
| トレーラードライバー | ★★★☆☆ | 大型・牽引免許必須 |
| IT・DX推進職 | ★★★☆☆ | 物流DX経験者に需要あり |
栗林商船に向いている人
- インフラ・物流業界で長期キャリアを築きたい人:130年超の安定企業で腰を据えて働ける環境があります
- 海運・RORO船・モーダルシフトに知見・関心がある人:業界パイオニアならではの深い技術・ノウハウに触れられます
- 大手製造業・製紙業との大型商談・取引に関わりたい人:王子製紙・日本製紙クラスの荷主との実務経験が積めます
- 海技資格・物流資格を持ち、専門性を活かしたい人:資格・技術が直接待遇に反映される体系があります
- 安定した企業で福利厚生・退職金を重視する人:社宅・退職金・持株会など老舗大手ならではの制度が整っています
- 北海道・東北に縁があり、地方インフラに貢献したい人:同社のネットワークは地域経済の根幹を担っています
栗林商船に向いていない人
- スタートアップ・ベンチャーのスピード感を求める人:意思決定は慎重・長期志向であり、変化のスピードは遅い傾向があります
- 短期昇進・ハイスピードな年収アップを狙う人:年功序列・長期育成の文化が強く、急激な昇給は期待しにくいです
- 完全リモート・フルフレックスを希望する人:物流・海運の現場業務が中心であり、リモートワーク対応できる職種は限られます
- 都市部一極集中での生活を希望する人:北海道・東北・清水・大阪など全国の港湾拠点への転勤が伴います
- 変化・新規事業開発が好きな人:安定した既存事業の深化が中心であり、スタートアップ型の新規事業開発は少ない傾向です
栗林商船の選考対策
戦略1:内航海運・モーダルシフトへの深い理解を示す
2024年問題・カーボンニュートラル・物流効率化という社会的文脈でのモーダルシフトの重要性を理解し、自分の言葉で説明できることが必須です。「なぜ内航海運なのか」「なぜ栗林商船なのか」を論理的に語れる準備をしてください。
戦略2:130年の歴史と現在の事業戦略を紐づける
IR資料・統合報告書・中期経営計画を熟読し、創業の歴史と現在の成長戦略(モーダルシフト・DX・グループ最適化)を結びつけた志望動機を作成すると差別化できます。
戦略3:物流・製造業界での実務経験を具体化する
輸送コスト削減・サプライチェーン改善・大手メーカー対応など、物流・製造関連の実務経験を具体的な数字と課題解決のストーリーで語れるように準備しましょう。
戦略4:長期コミット意向を明確に示す
平均勤続13年という社風の中では「すぐ転職しそう」な印象は選考不通過リスクです。5〜10年のキャリア展望を語り、長期的に同社で積み上げたいスキル・実績を具体的に述べましょう。
戦略5:北海道・東北拠点への転勤受容を示す
主要事業拠点が北海道(苫小牧・釧路)や東北(仙台)に集中しているため、転勤への柔軟性は重要な採用ポイントです。理由とともに転勤への納得感を示せると評価されます。
戦略6:資格・技術の強みをアピールする
物流業務改善・IT・財務・法務・海技などの専門資格・技能は積極的にアピールしてください。特に物流DXへの取り組みは業界全体の課題であり、ITスキルと物流知識の組み合わせは希少価値が高いです。
栗林商船への転職で評価されやすい経験
- 内航・外航海運会社での営業・業務経験
- 物流会社(3PL・フォワーダー・陸送)での業務経験
- 大手製造業・製紙・素材メーカーでのSCM・調達経験
- 港湾・倉庫での現場管理経験
- トレーラー・大型車両の運転資格(大型一種・牽引免許)
- 海技士免状(1〜3級)・海上技術資格
- フォークリフト・荷役機械の操作資格
- 上場企業での経理・財務・IR経験
- 法務・契約管理経験(大型輸送契約・傭船契約)
- 物流DX・IT推進経験(WMS・TMS導入等)
- 中国語・英語での実務コミュニケーション能力
- 危険物取扱者・通関士資格
- プロジェクトマネジメント経験(大型案件推進)
まとめ
栗林商船株式会社は、1894年創業・内航RORO船パイオニアという圧倒的な歴史と実績を持つ、日本の物流インフラを支える安定企業です。製紙大手との100年超の取引・トレーラー3,300台超の海陸一貫輸送・北海道〜本州の代替困難なネットワークという三重の競合優位性を保持しています。
転職先として選ぶポイントは、安定性・社会インフラへの貢献・長期キャリアの三点です。2024年問題を背景としたモーダルシフト需要の追い風により、内航海運業界自体が見直されている今、業界パイオニアとして安定した事業基盤を持つ栗林商船は魅力的な選択肢です。
一方で年功序列・慎重な意思決定・転勤有りという条件は、スピード感や都市集中を好む方には合わない可能性があります。転職エージェントとして推薦するのは、長期志向のキャリア構築と物流インフラへの貢献意欲を持つ人材です。
公式サイト(https://www.kuribayashishosen.com/)でIR情報・採用情報を確認し、転職エージェントと連携して選考準備を進めることをお勧めします。
2024年問題・脱炭素・デジタル化という三つの社会変化が追い風となる内航海運業界において、130年の実績を持つ栗林商船は長期安定キャリアを築く舞台として高く評価できる企業です。物流インフラで日本の産業を支えるという仕事の社会的意義も、キャリア選択の重要な軸になるでしょう。
なお、転職活動の際は同業界(川崎近海汽船・九州急行フェリー等)との比較検討も行い、栗林商船の独自の強みと自分のキャリア目標が合致しているかを確認した上でエントリーすることをお勧めします。面接では「なぜ内航海運か」「なぜ栗林商船か」の2段構えで志望理由を語れる準備が特に重要です。
キャリアインサイトでは、海運・物流・インフラ業界への転職情報を多数掲載しています。ぜひ他の記事もあわせてご参照ください。
