転職相談で最も多い言葉は、「もう辞めたいんです」だ。
でも、その「辞めたい」の正体を掘っていくと、多くは“環境そのもの”ではなく、“情報不足”にたどり着く。ここを勘違いしたまま動くと、辞めても同じことを繰り返す。
「辞めたい」の正体は、たいてい「比べられない」こと
人は、比較対象がないと自分の状況を正しく評価できない。今の給料が高いのか低いのか、この忙しさが普通なのか異常なのか——「よそを知らない」まま、目の前の不満だけが増幅していく。
逆のことも起きる。本当は悪くない条件なのに、SNSで見えるほんの一部だけを切り取って「自分はダメだ」と思い込む。どちらも、情報がないから起きる錯覚だ。
情報不足が生む、3つの錯覚
一つ目は「自分の市場価値」の錯覚。安く見積もりすぎて動けない人も、高く見積もって空回りする人もいる。
二つ目は「よその会社」の錯覚。実態を知らないまま、理想化した転職先を追いかけてしまう。
三つ目は「逃げの正当化」。情報がないと、「この会社が悪い」で思考が止まり、本当の原因が見えなくなる。
まず調べるべきは、「自分の市場価値」
辞めたくなったら、求人を眺める前に自分の値段を知ることだ。同じ職種・同じ年次で、他社がいくら出しているのか。転職サイトの想定年収、エージェントの査定、口コミサイトの給与欄。複数を突き合わせれば、だいたいの相場は見えてくる。
ここで「意外と高い」と分かれば、交渉という選択肢が増える。「低い」と分かれば、動く根拠になる。どちらにせよ、感情ではなく数字で判断できるようになる。
次に、「よそはどうなのか」を具体で知る
「もっと良い会社があるはず」は、具体化して初めて意味を持つ。何が良いのか。年収か、裁量か、働き方か。それを一つずつ、実在の企業の情報に当てて確かめていく。
企業研究とは、この「当てて確かめる」作業のことだ。イメージではなく、事業の構造・評価制度・働き方といった具体で見る。そこまでやって、はじめて「今の会社より本当に良いのか」が判断できる。
それでも、辞めるべき時はある
誤解しないでほしい。情報を集めた結果、「やはり辞めるべきだ」となることは当然ある。心身を壊す環境や、成長が完全に止まる環境からは、むしろ早く離れた方がいい。
大事なのは順番だ。「辞めたい→衝動で動く」ではなく、「辞めたい→調べる→根拠を持って動く(あるいは残る)」。この一手間が、後悔するかどうかを分ける。
動く前に、知る
転職の失敗の多くは、「動いたこと」ではなく「調べ不足」から生まれる。逆に言えば、情報さえ集めれば防げる失敗はかなり多い。
「辞めたい」と思ったら、まず調べる。自分の価値を、よその実態を、辞めた先の現実を。それが、後悔しない転職の、いちばん最初の一歩になる。