求人票に「固定残業代あり(月〇万円)」と書いてある。パッと見、悪くない条件に見えます。
でも、その数字だけを見て「良さそう」と判断するのは早いです。金額より先に確認すべきことが一つあります。「何時間分の残業が含まれているのか」です。
みなし残業(固定残業代)の仕組み
固定残業代とは、あらかじめ決められた時間分の残業代を、毎月一定額として基本給に上乗せして支払う仕組みです。「みなし残業代」や「定額残業代」とも呼ばれます。
たとえば「月20時間分の固定残業代・2万円」と設定されていれば、毎月2万円が残業代として支払われます。残業が20時間未満でも2万円は受け取れます。一方で、20時間を超えた分は別途支払われるのが原則です(超過分の扱いについては後述します)。
求人票や内定通知の書き方はさまざまで、「固定残業手当として〇万円含む」「みなし残業〇時間分含む」など表現が統一されていません。金額しか書かれていないケースも多いです。
「何時間分か」で意味が変わる
同じ「固定残業代2万円」でも、含まれている時間数が違えば意味がまるで変わります。
たとえば20時間分なら、1時間あたり1,000円の計算です。30時間分なら約667円、40時間分なら500円になります。この数字が低いほど、残業1時間あたりの対価は小さくなります。
さらに「みなし残業時間が長い=その分の残業が発生することを見越している」という見方もできます。40〜80時間のみなし残業を設定している求人は、実際にそのくらい働くことが前提になっている可能性が高いです。
金額だけを見て飛びつくと、実態とのギャップに後から気づくことになります。
実質の時給で考えてみる
もう少し踏み込んで、実質的な時給を計算してみることをすすめます。
たとえば「月給30万円、固定残業代60時間分含む」という求人があったとします。月の所定労働時間を160時間とすると、実際には最大220時間働くことが前提になっています。30万円÷220時間で計算すると、実質時給は約1,360円です。
同じ30万円でも「固定残業20時間分含む」であれば、180時間で割ることになり実質時給は約1,667円になります。同じ月給でも、みなし残業時間次第でこれだけ差が出ます。
もちろん実際の残業時間は会社によって異なります。ただ、こうして数字に置き換えてみると、条件の重さが具体的に見えてきます。
超過分は払われるか
固定残業代で決定的に重要なのが「みなし時間を超えた分の残業代はどう扱われるか」という点です。
超過分は別途支払われるべきものですが、実際の運用は企業によって異なります。求人票に「超過分は別途支給」と明記されているケースもあれば、何も書かれていないケースもあります。
オファーを受ける前に、この点を確認しておくことが大切です。「固定残業時間を超えた場合の残業代の扱いはどうなりますか」と聞くのは、ごく自然な確認事項として受け入れられます。
また、「固定残業時間の設定がどのくらいの実態に基づいているか」を聞いてみるのも有益です。「実際に月何時間くらい残業している人が多いですか」という質問で、現場の実態に近い情報が得られることもあります。
求人票での見抜き方
求人票を見るとき、以下の点を意識して読むとよいでしょう。
まず「固定残業○時間分含む」という記載があるかを確認します。時間数の記載がなく金額だけ書かれている場合は、必ず時間数を確認すべき案件と考えておいた方がよいでしょう。
次に、月給の内訳を見ます。「基本給○万円+固定残業代○万円」と分けて書かれているか、合算で書かれているかで透明度が異なります。分けて記載されている方が、条件の全体像が把握しやすいです。
もう一点。みなし残業時間が長めに設定されているのに、月給が相場より低い求人は慎重に見た方がよいです。実質的な時給換算で考えれば、条件の重さが見えてきます。
オファー時に確認する
最終的には、オファーを受ける前の段階で一度きちんと確認することをすすめます。
「固定残業は何時間分が含まれていますか」「その時間を超えた場合の扱いはどうなっていますか」「実際の残業実態はどのくらいですか」——この三点を聞くだけで、条件の中身がかなり明確になります。
労働条件の詳細は雇用契約書に記載されるものですが、オファー段階で疑問を解消しておく方が、入社後のすれ違いを防ぎやすいです。確認することは、交渉ではなく情報収集です。遠慮なく聞いてください。
求人の「みなし残業あり」は、それ自体がダメということではありません。何時間分か、超過はどうなるか、実態はどうか——その中身を確かめた上で判断することが大切です。